スマホの写真

会社の同僚にまたしても合コンに誘われて、今日も参加していた。
自分としては毎度の冴えない男性陣に興味を無くして、
みんなの会話に相槌を打っているがイマイチ興味が湧かない。
すると自然にインスタグラマムを眺める様になっていた。
そんな時、何かの集合写真が目にとまり気になりました。
大勢がピースサインをしながら笑顔をカメラに向けている中で、
1人だけ虚ろに何処かを見ている男性がいる。
何だか気になって、今の自分に似ているようで興味が湧いた。
そこで投稿主の友人に探りを入れてみることにしたのだった。
初デート

待ち合わせ時間を五分過ぎた頃、
黒いマスクをつけた男性が私に小さく手を振る。
「遅れてごめん」
この人が、合コンの時にインスタグラムで気になったあの男性だ。
友人の協力もあり、私たちはデートをする運びになっていた。
昼は映画を見て、夜は予約しておいたイタリアンレストランで食事という
テンプレートみたいなデートをして分かったことは、
彼は口数が少ないタイプだということ。
そんなところにますます興味を持った。
「あのー、また会ってくれる?」
恐る恐る伺うと、チョコレートのショートケーキを食べながら小さく頷いてくれた。
脈あり?

次にデートに来たのは、
冬になるときれいなイルミネーションで彩られる人気観光スポット。
人混みが多かったので、どさくさに紛れて手を握ってみると、
照れ隠しなのか目を合わさずに「きれいだね」と言うので、彼をからかってみる。
「イルミネーション?それとも私?」
少し困ったような顔をして笑うので、キュンとする。
ばれないように彼の顔を覗き込むと、頬を赤らめている様な気がして、
周りから見たらもうこれってカップルみたいじゃん!と、浮かれる私だった。
優先順位

三回目のデートとなる今日は、彼の近所にあるカフェでランチ。
先日の彼の言動や表情を見て、もう付き合えるだろうと確信していたが、
この日の様子は少し違っていた。
食事を終えた後、なにやら一生懸命にスマホを触っている。
暇になった私は、お店の前を通る人たちを窓から眺めていたが、
すぐに飽きたので話しかけると、彼は一瞬だけ顔を上げた。
「最新ゲーム」
そう言って、すぐにまた画面に目を戻す。
「最近のゲームはすごいよね」と話を合わせてみるが彼は頷くだけで、
自分よりゲームを優先されることに、少し嫌な気分になってしまった。
まさかの・・・

改札まで送ってくれる彼の手を握りながら
上目遣いで「このまま一緒にいたいな」と甘えると、彼は目を丸くさせた。
「それってどういうこと?」
「えっと…、あなたのこと好きってことなんだけど…」
繋いでいた手をそっと離されて、今度は私が目を丸くさせる。
いつもはキリっとしている眉が下がり、
悲しそうな顔をした彼から告げられたのは、衝撃の一言だった。
「そういう関係にはなれない」
どうして?

あの日以来、頭の中にはフラれた場面がグルグルと巡るようになり、
納得がいかなかった私は、メッセージを数回送ったが返事はなかった。
振り返ってみても自分がどこで失敗したのかが全く分からない。
悶々とした日々を送っていると、
合コンの時に連絡を取った友人のインスタグラムに彼の姿が。
相変わらず虚ろな表情でピースサインもない。
私といた時は、もっと楽しそうな顔をしていたのにー。
そう思うと会いたくなって、気付けば家をとび出していた。
発覚

彼の家に着いたのは、19時頃でまだ帰宅していない。
ストーカーまがいなことをしているなと思ったけれど、
彼に会って振られた原因をどうしても知りたかった。
1時間ほど待つと、遠くから彼ともう一人の男性が現れて
彼女でないことにホッとする。
彼の友人には悪いが、せっかく来たのでここで話をさせてもらおうと
名前を呼びかけた瞬間、慌てて口を手でふさいだ。
二人は、キスをしていたのだ。
予想外すぎる展開に、私の思考は完全に止まっていた。
いろいろな恋

帰りの電車に揺られながら、さっきの二人を思い出す。
フラれた時よりも衝撃的だったが、理解は安易にできた。
彼には同性の恋人がいる。
彼はきっと、私の事は初めから友達だと思っていて、
デートだと思い込んでいたのは私だけだったようだ。
失恋してしまったのに何故だか苦しくないのは、
あの二人が幸せそうに見つめあっていたから。
さすがに道の真ん中でキスをしたときは
「ここは海外か」とツッコみたくなったが、
なんだかその光景が微笑ましかったのも事実だ。
今の時代、様々な恋の形があって、難しくも美しい。
恋人にはなれなかったけれどもう一度、
彼と友達になれたらいいなと密かに思っている。
そしてもちろん、二人の幸せを一番に願っている。
r109著










