飲食店での出合い

縁があるようでない男

ひとりで居酒屋のカウンターで飲んでいた時のこと。いつものようにマスターとお話をしながら楽しく飲んでいた。そこに、ひとりの男性客がやってきた。初対面からなれなれしくマスターとも下ネタを交えながら話をしていた。私はその瞬間「この人苦手だ。」と認識してしまった。

私にもなれなれしく話しかけてくるので、適当な相槌を打ちながら聞いていた。年は40歳。独身。私は32。近くに住んでいるらしい。私も徒歩5分くらいで来られる場所だけど教えない。始終出会いがどーとかこーとか言ってるのでだんだんうざくなってしまった。まあ、酔っ払いの戯言だ。聞き流すことにした。きっと、もう会うこともないし。

同じ町会

暫くした頃、地区の運動会があった。地区の運動会とは、地区内の12町会で綱引きをやったり玉入れなんかで競うものだ。私は目を疑った。同じ町会にこの前のあいつがいるではないか。まったく知らなかったとはいえ、これでどこに住んでいるかばれてしまった。やりずらい。何気ない顔で「どーも。」と声を掛けてみた。「あれ?この前の・・・。」何か言われる前に苦笑いでやり過ごした。

運動会が終わった後の慰労会であいつはまた絡みだした。酒が入ると変わるのか、陽気にしゃべりだした。誰も聞いてない自分のことを。「しばらく彼女いないんですよ。」とか「俺の魅力って何ですかね?」とか他の人も迷惑そうにあいつの話を聞いていた。この時もやっぱり苦手だと思った。だけど、同じ町会でもあとは目立った行事があるわけでもないので会うことはないと思った。

まさか社食で・・・

また暫くした頃だった、とんでもないところであいつに会った。職場の社食で。「え?何で?」まさか同じ敷地内で働いてるとは気が付かなかった。私は1階のフロアであいつは3階のフロアで働いていた。やはり認めたくはないが縁があるらしい。向こうもそう思ったのか、「よく会うね。」と笑顔で言われた。やばいロックオンされたか?わかっていると思うが、私は1ミリもあいつに興味はない。これだけは絶対だ。「そーですね。」と苦笑いで返しといた。これから、同じ敷地内で会うとは憂鬱だった。

社食で会うと無視するわけにもいかないので、挨拶くらいは交わした。そのうち、あいつから話しかけてくるようになりこの前は相談された。実は、あいつの実家が自営業をしていて最近父親の具合が悪いらしく実家に帰ろうか迷ってると言われた。私は、実家を継ぐとか継がないとかは別にして、迷ってるくらいなら帰ったほうがいいんじゃないかと言った。あいつが40ということは、父親は若くても60~70歳くらいか。何かあってからでは後悔すると思った。そのあと実家に帰ることに決めたらしく、引っ越しの挨拶に来た。これでもう会うことはないと思った。

やっぱり興味はない

またいつもの居酒屋でひとりで飲んでいた時、あいつに会った。店が混んでいたこともあり、隣同士の席になった。「最近どう?」なんとなく何か話さないといけない空気になり、当たり障りのないように訊いてみた。結局父親は寝たきりになってしまい実家を継ぐことにしたらしい。「そっか。大変だったね。」と私は言った。あいつは私に何か言おうと口を開きかけたがそれは言葉にならなかった。これでいい。これでよかったんだ。

久しぶりに会うあいつは、少し落ち着いたように思う。前みたいになれなれしくないし、うざくはない。もしかしたら、そういう風に振舞っていただけなのかな。ま、だけど興味はない。そこだけは忘れないで。それから、内容のない話をしながら飲んで別れた。

縁があったとしても

たとえ縁があってもそれが恋愛関係に発展するとは限らない。もしかしたら、向こうは私に好意を向けていたのかもしれないが、それは気づいていても気づかないふりをしなければならない。それは相手のためであると思っている。無駄に傷つける前に何も言わない方がいいのかもしれない。

実はそのあと、噂であいつが結婚したことを知った。やはり興味はないが少し寂しいようなよくわからない気持ちになった。こちらに好意を向けていてくれたことに、ひとつの心地の良さを感じてたのかもしれない。なんて自分勝手なんだと思ってしまった。出会い方ひとつで相手の印象は変わるものだと常々思っている。もし別の場所で出会っていたら、また別の未来が待っていたのかもしれない。だけど今はやはり「縁がなかった。」そう思うしかなかった。

a673著

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