婚活にて出会う

人を傷つけた過去・・受け入れてくれた彼に私が出来ること

人は失うまで大切なものの存在に気が付けない生き物だって聞いたことがある。でも私はそんな馬鹿なことはしない。

必要なものも、大切なものも私はちゃんとわかっている。自分で選んで生きてきた、今までも。そしてこれからも何も変わらずそうして生きていく。

全て許されてきた。だからこれからも私はきっと変わる必要はない、そう信じていたのに・・。

自分勝手な私をいつでも受け入れてくれた元夫

私の名前はミチ。1年ほど前に浮気されて離婚した28歳。

元夫の洋平とは学生時代からの付き合いで、学校を卒業後すぐに結婚した。

洋平とは大恋愛でもなければ、私にとっては好みのタイプでもなかった。ただ、安心感だけはいつでも与えてくれた。

私が寂しいと言えば夜中でも駆けつけてくれて、欲しい物があると言えば買ってくれて、私が浮気しても許してくれる。

だから私には常に浮気相手がいた。その相手とダメになれば洋平のところへ帰る。

結婚してからもその生活は変わらずだった。私の希望でマイホームを購入して、仕事が辛いと言えば専業主婦になることを勧めてくれた。どんなことも受け入れてくれる。だから私は完全に安心していた。

まさか裏切られるなんて微塵も思っていなかったのだ・・・。

元夫の裏切り

それは私が怪我をして入院している時だった。洋平からのメッセージ受信を知らせる通知がきた。

『これからお見舞いに来てくれるって連絡かな。デザート買ってきてもらおう』なんてことを思いながらメッセージを開くとそこには・・

【今仕事が終わったよ。何時に会える?今日は奥さんの所には行かないから、すぐに会えるよ。早く会いたい】

と明らかに私宛ではない文章がそこには書かれていた。

はじめは意味がわからなかった。わかりたくなかった。誰が読んでも浮気相手に宛てた内容だったけど、私は心の中で『そんな訳ない。私がいるのに浮気なんてするはずがない』と思い込もうとしていた。

洋平には私しかいないと信じて疑わなかったし、そんな洋平が浮気なんて絶対ないと思っていた。だから結婚してあげた。それなのに私を裏切るなんて・・。

洋平はすぐに誤送信に気が付いて慌てて電話をかけてきた。でもなんて話したらいいのわからないし、話を聞くのが怖くて電話には出られなかった。

30分ほど経った頃に、洋平が病院にやってきた。そして告げられた。

「ごめん。他に好きな人が出来た。ミチのことは本当に大切に思っているけど、だけどもう女性としてじゃなくて、妹みたいな存在になってた。もちろん俺たちは夫婦だから、全面的に俺が悪い。離婚はミチの条件を全部呑むから。離婚してほしい。」

言われていることが全然理解できなくて、何も考えられなかった。

ただ自分でも信じられないくらい、洋平を失う恐怖で震えていることだけはわかった。

離婚してからの私

離婚が決まってからの洋平の動きは早かった。私が退院する時には引っ越し先も決めて準備を進めていた。

「無事に退院出来てよかった。体はもう大丈夫?明日には出ていくけど、何か困ったことがあったらいつでも連絡してくれていいから」

「そんなこと言うならずっとここにいればいいのに・・」

私は勝手に口から出た自分の言葉に驚いた。

「ごめん、ミチ。それは出来ないんだ・・ほんとにごめん。」

謝られるとどんどん惨めな気持ちになった。泣き叫んで「行かないで!」と言いたかったけど、それはプライドが許さなかった。

「ああ、嘘うそ。わかってるから気にしないで。子どもが出来る前でほんとに良かったよ。」

「ミチ。俺はずっとミチにとってどんな存在なんだろうって思ってた。ミチに必要とされなくなるのが怖くて必死だった。でもその関係で上手くいくわけないよね。だからミチが浮気するのもわかる気がしてたんだ。俺ほんと自分に自信なかったから・・」

最後の最後になんでそんなことを話してくるんだろうと思った。本当は相手の女がどんな人でどこに魅かれたのかを聞きたい気持ちを抑え眠りにつくことにした。

でも眠れるはずもなく、ずっと考えていた。今までの自分を振り返り、どうしてあんなことができたのだろうと。何をしても許されるなんて、どうして思えたのだろうと。

まさか自分が洋平のことを必要としているなんて思ってなかったから。後悔しかなかった。

洋平がいなくなってからの日々はどう過ごしていたのか全く覚えていない。ただ空気のような存在だったから、いなくなった途端に息が上手く出来なくなったことだけは覚えている。

そんな時間がどれだけ過ぎただろう。気が付けば1年以上が経っていた。少しづつ、心配してくれる周りの声を聞けるようになり、このままじゃいけないと思うまでに回復していた。

「そろそろ動かなきゃな。」

私は思い出のマイホームを売ることに決めた。

婚活で出会った運命の人

マイホームも売れ、私はマンションへ引っ越すことにした。しばらくは実家で生活させてもらっていたが、一人暮らしをして自立する方が自分のためにもなる。

いつまでも実家に甘えるわけにもいかないし、30歳も目前。やっぱり結婚はしたい。両親もそれを願っているはず。
そこで私は友達の勧めもあり、婚活パーティーに参加することにした。

就職活動をしようかとも思ったが、何のキャリアもない私が仕事を見つけるのは容易ではなかった。

それにお金には困っていなかっことも大きい。家を売ったお金もあったが、それ以上に十分な生活費として慰謝料と財産分与をもらっていた。

様々な形がある婚活パーティーの中で、私は合コン型の婚活パーティーを選んだ。

そこで出会ったのが大手保険会社に勤務している30歳の正樹だった。

正樹も婚活パーティーに参加するのは初めてだったので、初心者同士で話が盛り上がった。

正樹は2年前に彼女と別れてからは新しい出会いもなく、30歳になり両親から結婚へのプレッシャーを感じ、今回試しに婚活パーティーに参加してみたと話していた。

正直、正樹はどうして2年も彼女が出来ないでいるのか不思議なくらいの男性だった。

安定した企業で収入もあり、見た目だって優しそうで爽やかなイケメンだ。

私からしたら非の打ちどころがない人だった。

「ミチさんのこともっと知りたいから、連絡先交換してもらえるかな。」

正樹からそう言われたときは本当に嬉しかった。

連絡先を交換して、近いうちにまた会おうと言って初めての婚活パーティーは終わった。

でも私には不安があった。

『もし正樹さんが私に好意をもってくれたとしても、私なんかが付き合っていいんだろうか‥。そもそも連絡先交換してよかったのかな』

そんな私の不安をよそに数日後・・

【この前はありがとう。早速今週末にでもお食事に行きませんか?】

そう正樹からのお誘いがきた。

迷った私は婚活パーティーに誘ってくれた友達のナツミに相談することにした。

「何のために婚活パーティーに参加したの?洋平さんのことは、傷つけたと思うよ。でも反省したでしょ。不倫されてミチも傷ついたんだし。

もうあの頃とは違うから、一歩を踏み出そうとしたんでしょ。何も後ろめたいことなんてないじゃない。それに洋平さんと正樹さんは違うんだよ。ミチは幸せになってもいいんだよ。」

人を傷つけた私は幸せになっちゃいけない人間だと感じてた。でもそんな私でももう一度幸せになろうとしていいのかな。

「ありがとう。」

ナツミにそう告げて、私は正樹からのお誘いを受けることにした。

本当の幸せを教えてくれた人

それから私と正樹は何度か食事をし、親交を深めていった。

出会ってから3カ月経った頃、正樹から結婚を前提に付き合ってほしいと言われた。

「2年以上彼女ができなくて、初めて行った婚活パーティーで出会ったのがミチさんで本当に良かったと思ってる。」

私も正樹が好きだった。この人とずっと一緒にいたいと思っていたから、心の底から嬉しかった。

でもこれからのことを思うと、洋平のことはちゃんと話してそれでも私と一緒にいたいか考えてもらいたかった。

私は洋平のことを正樹に全て話した。

学生の頃から付き合って結婚して、甘え切って傷つけたこと。気が付いた時には取り返しがつかなくなって離婚したこと。

正樹は最後まで黙って話を聞いてくれた。

そして私の話が終わると、今度は正樹が話し始めた。

「2年前まで付き合っていた人って俺にとって初めて付き合った人だったんだ。この歳で経験人数1人って引くでしょ。でも俺にとって彼女がすべてだったんだ。」

そう話す正樹は少し寂しそうに笑った。

「彼女の希望通りにしないと俺の前からいなくなると思ってた。だから毎日必死だった。今の会社も彼女がいいって言ったから絶対就職しようと頑張ったんだ。

だけど、地方への異動の話が出た時に、じゃあ会えなくなるからお別れだねって。ひどい話でしょ。数年したら戻ってこれるから別れたくないって言ったんだけどね。

そしたら『どうして私があなたを待つ必要があるの?自分が本命だとでも思っているの?』だって。それから女性と付き合うのが怖くなったんだ。」

私が洋平にしていたことと重なって苦しくなった。やっぱり私はこの人にふさわしくない。私が側にいたら傷つけてしまう。そう思った。

私が戸惑っていることに気が付いた正樹が、こう続けた。

「俺がミチさんの話を聞いて、傷ついたと思ってる?だとしたらそれは違うよ。俺が知ってるミチさんは彼女とは違う。それに昔のミチさんと今のミチさんも違うでしょ。俺は今のミチさんを見てるから。」

その言葉は自信をなくしていた私の心に響いてきた。

「これからは俺のために側にいてください。」

その言葉を聞いた時、素直にこの人を幸せにしたいと思った。

私は人に求めるばかりで、何も返してこなかったことに気が付いた。でもそれでは自分も幸せになれない。人に与えることで、自分も幸せになるんだと正樹は私に教えてくれた。

それから半年後、私と正樹は結婚することになった。

私は離婚してから初めて、洋平の幸せを願った。

『私は今幸せだよ。洋平にも幸せでいてほしい』

そして私を受け入れてくれた正樹に私が出来ること。

それは自分だけじゃなくて、二人で幸せになるために努力すること。

幸せは待っていてもやってこないし、誰かが与えてくれるものでもない。

自分でつかみに行くものだから。

私は正樹と二人で幸せになる・・そう誓ってこれからを生きていく。

 

momoko著

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