家庭教師に出会う

この気持ちの正体は最後までわからなかった。

人は初めて恋をしたとき
なぜそれが恋だと
気付くことができたのでしょうか。

はじめてなのに。

私は、今でもわからないのです。

あれが恋だったのか。

それとも憧れだったのか。

でも思い出すたび、心が温かくなるのです。

まるで寒い日に、
春の日差しが降り注いだ時のように。

期間限定家庭教師

「将来は獣医になりたい」

小さいころから犬や猫が大好きだった私は、
ずっとその夢を追いかけ、勉強を続けてきました。

中学までは成績もよく、このまま頑張れば
夢は叶えられると思っていました。

しかし、
その後進学した高校は周りのレベルも高く、
今までの頑張り方では成績が付いてこなくなり、
私はどんどん落ちこぼれていったのです。

高校2年生のある日、そんな私を見かねた母が
まずは少し試してみよう、と
家庭教師を頼んでくれることになりました。

今まで塾にも通ったことのない私は、
いきなり初めて会う先生とマンツーマンで勉強なんて
上手くやれるだろうかと不安でいっぱいでした。

そして、初めて家庭教師の先生に会う日がやってきました。

久しぶりの感覚

私の先生になったのは、
都内の大学に通っている4年生の男の人でした。

すでに就職先も内定しているようで、
期間は今日から来年の2月までの”約半年”。

学校へはゼミがある日しか行っていないため、
私の家へは週に3日来てくれるとのことでした。

先生は口数が少なく、笑顔をあまり見せない人でしたが、
質問をすると丁寧に、そして私が理解できるまで
内容をかみ砕いて教えてくれるとても熱心な人でした。

会う前の不安もすぐに吹き飛ぶくらい、
先生の授業にはまっていきました。

そして家庭教師をお願いしてからひと月が過ぎたころ、
2学期の中間試験がありました。

結果は、
5教科の合計点が1学期よりも10点上がっただけでした。

点数としては大きな変化ではありませんでしたが、
一人で勉強をしていた時よりも、
明らかに試験内容をきちんと理解できているという実感がありました。

小さなプレゼント

中間試験の結果から、「このままやればいける!」と、
中学の頃のような勉強に対する自信を少し取り戻した私は、
その日からさらに勉強に力を入れました。

すると同時に、
先生も少しずつ変わっていったのです。

いつも終了予定時間を過ぎてしまう先生の授業ですが、
先生は毎回延長料金なしで教えてくれ、

帰り際にいつも、
「疲れた脳にも栄養をあげてね」と、
キャラメルをくれるようになったのです。

私のために毎回用意してくれることが嬉しくて、
気付けばいつの間にか、
先生にもらうキャラメルが宝物のようになっていきました。

初めての顔

新しい勉強のリズムが掴めるようになり、
2学期の期末試験を迎えました。

今度は
前回の合計点からさらに30点も点数が伸びたのです。

これは先生のおかげです。

私はとても嬉しくて、
思わず先生に報告をしました。

勉強のことで何かわからないことがあれば
いつでも連絡してきていいよ、と先生から
教えてもらっていた連絡先ですが、
連絡をしたのは、この日が初めてでした。

しばらくしてから返ってきたのは、
口数の少ない先生には似合わない、
とても可愛いスタンプ付きのラインでした。

とても意外で思わず笑ってしまったことを、
今でも覚えています。

思い出した別れ

短い冬休みが終わると、
あっという間に3学期になっていました。

そして、この時になってようやく思い出したのです。

先生とのお別れが近いということを。

大学4年生の先生は春から就職のため、
2月いっぱいで家庭教師を辞めると、
出会った初日に聞いていました。

これからも勉強を教えてもらうつもりでいた私は、
これからどうすればいいのかと一瞬不安が頭を過りました。

しかし、すぐに答えに辿り着きました。

自分が今できることを全力で頑張ろう、と。

それは、
今まで教えてもらった勉強は無駄ではなかったと、
きちんと点数で先生に伝えるということでした。

その想いを強く持ち、今まで以上に勉強し試験に臨んだ結果、
3学期の成績は過去最高点に到達。

先生はとても喜んでくれました。

褒めてくれました。

そしてそれから数日後、
先生は私の家庭教師を最後に、
このバイトを辞めたのです。

これからが本番

その後3年生に進級した私は今、塾に通っています。

母は先生の後任を探そうかと言ってくれましたが、
私の家庭教師は先生ただ1人だけでいて欲しかったので、
塾を選びました。

私の夢は獣医になること

今はそのために勉強をして
志望校に合格することが目標です。

そして、
まだ夢への途中ではあるけれど、
志望校に合格したら、
先生に合格の報告をすることを楽しみにしています。

その頃には先生はもう
私のことは忘れてしまっているかもしれないけれど、
そんな想いを持ちながら、今も勉強に励んでいます。

今まで勉強ばかりしていた私は、
周りの友人たちがごく当たり前のようにしている恋愛を
したことがありません。

そのため、先生に対するこの気持ちが、
ただの先生としての慕いなのか、
それとも恋なのかはわかりません。

でも、先生と過ごした時間や
交わした会話のことを思い出すと、
心がとても温かくなるのです。

そして、先生に会いたくなるのです。

 

Npoapov著

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