今年もまた 誕生日がやってきた

30を過 ぎると 誕生日は あまり嬉しくもないもんだ
仕事も定時に終わり 特別なこともある訳でもなく
普通にスーパーへ買い物 まっすぐ帰宅 なんて淋しい独身生活なのか
去年までは彼氏もいたから 二人でケーキを食べて過ごしたっけな
今頃新しい彼女とうまくやってるのであろう思うと 少し腹が立つ
家の前まで着くと私の部屋はやっぱり電気もついてない 当たり前だ
余計に淋しさがこみ上げる
最近2つ隣に越してきたばかりの 多分シングルファーザーであろう親子によく会う

お母さんらしき姿はみかけないから
お父さんと保育園児くらいのかわいい男の子と二人で住んでるんだろう
帰りの時間が一緒になることがよくある。
今日も
「こんばんは~今お帰りですか?」
週末だからか 自転車の籠から保育園の洗い物が入った大きなバックを取り出しながら
あいさつしてきた。
「どうも こんばんわ 荷物凄いですね」
「そうなんですよ 週末は洗濯物が多くて大変ですよ」
「明日 お天気いいといいですよね」
横にいた やんちゃそうな男の子が
「明日はお天気だったら動物園に行くんだよね パパ」とウキウキした声でいった。
ひざっこぞは、さっき転んだばっかりなのか? 擦り傷で血がにじんでた
いかにも保育園では先生を困らせるであろうそんなタイプの子だ。
「引っ越しもあってどこにも連れてってやれてなかったんで やっと明日は時間も取れたから遊びに行けるんですよ なあ健太」
「うん!」
「あっ 健太君て言うのね 私は由香里っていうのよ溝口由香里 よろしくね」
私は 軽く 健太君の頭をポンとした。
「由香里さんですね 私は松山と言います 見ての通り 父子家庭なんです どうぞよろしくお願いします」
この時はじめてちゃんとあいさつを交わしたのだ。
エレベーターで3階まで一緒にあがり 「じゃあ またね」
とお互いの部屋に帰った。
それからも度々 帰宅時間に会うことがあった

ある日曜日の 午後
玄関の前で 健太君が 泣いていた
「健太君 どうしたの?」
「クスンッ パパがちょっとだけお仕事に行ってくるって言って まだ帰ってこないの、、、」
鼻水をすすりながら 目にはいっぱいの涙を浮かべてパパの帰りを待っていたのだ。
「そっか、健太君お留守番してたのね 偉いね でも 淋しくなっちゃったんだね」
パパの帰りを待ちながら廊下に座り込んでミニカーで遊んでいたらしく 手は汚れて その手で涙を拭くもんだから 目の周りが 真っ黒になってしまっていた。
「健太君 お目目が真っ黒になっちゃたね おねえちゃん(おばちゃんと言うべきか?)のお家でお顔洗おうか パパが帰って来るまで お家でお留守番してればいいよ」
そう言って私の部屋で待ってもらう事にした。
帰った時に心配するといけないので、ドアには家で預かってるとメモ書きを張り付けておいた。

「健太君 パンケーキ食べようか?」 「うん」 元気のいい声だ。
一緒にパンケーキを食べながら パパの帰りを待っていた。
私の同年代の友達は 結構もうお母さんしてる人多い
お母さんてこんな感じなのかな 健太君の 美味しそうにパンケーキを頬張る顔を見ると安らぎを感じるのを覚えた。
そうこうしていると「ピンポーン」
「あっ パパだ!」健太はドアに駆けよってパパに飛びついた。
「どうも すみませんでした 急な仕事でどうしても行かざるをえなくて、健太を一人にしてしまいご迷惑をおかけしました。
「健太 お前は男の子だろ ちゃんと一人でお留守番できないとな 」
そう言って健太の口についていた、パンケーキのクリームを指で拭ってそれを舐めた。
「ごめんなさい でも一人じゃ怖かったんだもん」
パパの胸にスリスリするのが子犬のようで なんとも可愛かった
「いいんですよ、私は一人で暇してましたから あっ よかったら一緒にパンケーキどうですか?」
「いやーそれは悪いですよ あまりにも図々しすぎますよ」
「そんなことないですよ ちょっと待ってて下さい 今焼きますからね」
由香里は冷蔵庫から卵を取り出し 作り始めた。
リリリリーン リリリリーン
松山の携帯が鳴った

「はい、もしもし あーあーそうか、、、、」
どうも仕事の話らしい、会話の感じからすると
松山さんが上司で部下らしき者に指示してるといった感じだった。
それが パキパキと明確な指示の出し方で なんかカッコよく見えてしまった。
嫌だ!私ったら、、、 何考えてんのよ
それから なぜか意識しちゃって 健太君のパパと言うより松山さんとして見ちゃいそうでヤバいです。
なるべく考えないようにしよう
「じゃあ、そろそろ帰ります 本当に今日はありがとうございました。パンケーキまでご馳走になってしまって
そのお礼にごはんでもごちそうしますので よかったらどうですか?」
(そうきちゃうか、、、 一層ヤバいなこの展開は マジやばい)
「本当ですか 是非」
そう言って 次回のご飯の約束をしたのであった。
翌週の土曜日 ピンポーン 「はーい」
「こんばんは、松山です」 ドキドキしなからドアを開けた
「あっ こんばんは」
「先日はありがとうございました。 良かったら明日のランチ いいお店知ってるので、どうすか?」
「そうですね、用事もないのでいいですよ」
「じゃあ、11時頃に」
ランチの約束をした。
ドアを閉めるやいなや (あ~どしよう 何着ていく? 靴は? バックは? 髪型どうしよう?)
今夜はしっかりお風呂に入ってデトックスして、
しっかりパックしてネイルも塗り替えなきゃ
準備万端で翌日のランチを迎えた

車で30分ほど走らせると 「手作りハンバーグの店」というムーミンハウスの様な可愛い店が見えてきた。
店内は北欧スタイルで家族連れで賑わいでる
どこの家族も幸せをそうにランチを楽しんでいるように見えた。
私達はどんな風に見えているのだろう?
家族に見えるのかな?
私に健太君くらいの子供がいてもおかしくない年齢だ
私はこの空間にとても居心地の良さと幸せな気持ちを感じた。
なんて落ち着くのだろう これは店内の雰囲気のせいか、、、
それとも この松山さんと健太君の二人の存在か、、、
勝手な決めつけで 自分の居場所を見つけたように思えた。
ずっとこの二人といたいと素直に思えた。
この気持ち 伝えるべきなのか? でも二人はどう思っているのかもわからな
テーブルの上のハンバーグのソースが 滑らかにお皿に流れ込んでいくのをながめてたら
自然の流れに任せればいいか いつしかこの二人に なくてはならない存在になっているのかもしれないと思った。
答えは焦らなくてもいい そう 自然が一番だ
不思議とハッキリした答えがでなくても心が穏やかでいられるのであった。
koiwa著






