
清美はどこにでもいる普通のOL。仕事に行って帰る、無機質な生活を送っていた。1人で過ごす夏休みに嫌気が差した彼女は、思い切って街コンに参加することにした。
ドキドキしながら会場に向かう。初めての街コンはオープンスペースで気軽に話をして、いいなと思った人に投票し、マッチングを決めるシステムだ。
ラブソングの流れる店内では、既に何人かが座っている。第一印象が大事と聞くからには部屋に入った時から勝負は始まっている。出来るだけ姿勢を正し、自信があるように見せながら席までの道を歩く。
席に座って、アナウンスが始まるのを静かに待った。改めて周りを見渡すと、全体で25人くらいだろうか。そのうち女性は5人しかいない。これはラッキーな回かも知らないと思う清美は、男性と目が会うたびに少し微笑んで余裕を見せた。あまり女性慣れしてないだろう人が7割。残りの3割がチャラそうな見た目の人。特別に良いと思える人がいなくて少しがっかりする。

しかし、開始のアナウンスが始まると同時に清美の好みの眼鏡のインテリ系イケメンが会場に入ってきた。この人とお話ししてみたい!そう思った。
アナウンスに耳を傾けると、今回の街コンは、完全着席型で1周し、次に好きな席に座って少し話をする時間を2回ほど取るそうだ。お互いのことが分かるようにプロフィールシートを書いて待つように言われた。
職業、年齢、血液型、、欄を埋めていく途中で趣味に何を書くか迷う。貯金や勉強が好きな清美は、それをまっすぐに書いては引かれると知っている。強いて言えばカフェで勉強も好きなので、カフェ巡りとでも書こうかと思う。ついでに遊びに誘ってもらいやすいように、カラオケも付け足した。
よろしくお願いします!そう言ってスタートした向かいの席の人とのトークタイムは、そこまでタイプな人な訳ではないのに、緊張した。沈黙が怖いので、常に笑顔を意識して、明るく振る舞う。歯科医師だと話す彼は眉毛がなかった。出会いが沢山ありそうな職業なのに、なぜこの場に来ているのだろうと疑問に思いながらも、時間は過ぎていく。
3分程で次々と進んでいくため、誰と何の話をしたか覚えていられない。それでもお目当ての眼鏡のイケメンにはしっかりとマークして順番が来るのを待った。
遂に彼の番がくる。胸を高鳴らせていた清美は待ってる間にまるで恋にもう落ちてるかのようなドキドキでいっぱいだった。

「失礼します。史也(ふみや)です。」そう言って席に着いた彼は、前に身を乗り出して私の話を聞いてくれた。しかし、さっきまでどんな相手でも盛り上がって話せていた清美は一変して、照れてしまう。上手く言葉が出てこなかった。胸の高鳴りとは裏腹に目も合わせられない。ちらっと彼の瞳を見ると、暗い影が差していた。これは、ちょっと違うなと思われてる気がする。清美は泣きたくなった。
その後またメンバーを変えながら、婚活パーティーは進んでいく。計20人と話した清美は疲労困憊していた。
そして迎えた自由席でのトークタイム。何人かが浩美の席に近づいてくる。史也はなんと席を立って1番に清美の元に来てくれた。自分に向かってきてくれてたと喜ぶ清美だが、恥ずかしさで相手の目を見れずに、他にも来てくれた男性と話してしまう。それを見て史也は、がっかりした表情の後、隣の歯科医師と話を始めていた。
どうしよう。そう思った時には既に遅し。もう史也は席を変えてしまった。代わりに先程最初に話した歯科医師が積極的に話をしてくる。特に緊張もしないので、スラスラと話が出てくる。
いつもこうなんだ。本当に好きな人になかなか好かれない清美は自分の性格を恨んだ。
「2回目の席替えをします。」その声を聞いて動いたのは僅か数人で、大多数はそのままの席から離れようとしなかった。その中でも史也はまたこちらへやってきた。今度こそ!と思う清美と対照的に史也は歯科医師と仲良さげに話しかけ、意気投合しているようだった。
最後のマッチングにかけるしかないと思う清美。カードには1番に史也、2番に歯科医師を書いて、その後は適当に書いた。

神に祈るような気持ちで結果を待つ。彼女は最早彼に恋をしていた。実はどこか元彼に面影が似ている。頭が良さそうで少しズル賢く、目標に一直線そんな彼だった。あまりデートもしてくれず、お金のない男。でも気が利いて身体の相性が抜群に良かった。
そんな彼の改良版とでも言うのだろうか、真面目で仕事第一と話す史也は大手チェーン店の店舗経営を任されていると話していた。好きだけどお金を稼ぐ方が大切とも。彼なら、全部を捧げられる。そう彼女は思っていた。
しかし、結果は無惨だった。やはり歯科医師とマッチング、ヘラヘラしながらこちらに向かってくる。良かったら連絡先だけでも。そう思い史也に声をかける清美だったが、彼も別の子とマッチングしており、さっきまでとは違った顔で流されてしまった。
清美は元彼の影を追い求めるのではなく、新しい恋を始めようと心に決めて、家に帰るのであった。
tomasu著














