その出会いは普通だった。

22歳の春。
同じ部の別個所に彼女、アイは入社してきた。
「今日からお世話になります、アイです。宜しくお願いします。」
目鼻立ちのはっきりした、可愛いというより綺麗という方がぴったりだ。
彼女は挨拶を済ませると、上司に連れられ仕事場へ行ってしまった。
その時の僕ヒロオは告白してはごめんなさいを、される所謂非モテ。
恋愛に関して自信もなかったため、その時は特に何の気持ちもなかった。
飲み会がきっかけで急接近!

しばらくして、忘年会と歓迎会を兼ねた飲み会が催された。
1件目の飲みが終了し、2件目へ。
僕は飲む事はあまり得意ではないが、飲み会の雰囲気は大好きだった。
2件目でも楽しく飲んでいたが、隣で飲んでいた同僚がいつの間にかいない。
トイレかな・・・と思っていたが、なかなか帰ってこないため、気になり
トイレへ見に行った。
そこには倒れてしまっている同僚の姿が。
同僚のナオキは突っ伏しており、見るも無残な状態。
僕はとりあえず、掃除を始め、ナオキを介抱していた。
そこにアイが通りかかった。
「だ、大丈夫ですか!」
彼女の言葉に様子を見に来た上司がお店の人に状況を説明しに行くのを見送り、
ただひたすら僕は掃除をしていた。
アイは黙って様子を見ていた。
ナオキがとりあえず動かせる状態になったのを見計らい、飲み会は終了。
ナオキをタクシーへ乗せ、トイレを掃除し解散となった。
翌日、僕は在庫管理の書類をまとめる作業をしていると、アイの先輩ミユキが、
「今いい?ちょっとお願いがあるんだけど。」
普段あまり話をしないミユキがお願いとは珍しいと思い、話を聞いた。
「実は、アイなんだけど、デートに誘ってあげてほしいの。」
え、なぜに?と思いながら話を聞くと、飲み会での行動を見ていたアイが、
帰りに僕の事をいいな、もっと話をしたいなと言っていて、彼女恥ずかしがりやの
ようだから、ヒロオから誘ってあげてほしい・・との今までになかった話だった。
嬉しい話だったけど、恋愛に自信がなかった僕がすぐに行動できるはずもなく、
声をかけるのに2日もかかってしまった。
2日後、やっとアイに声をかける事が出来た。
「今日はいつもに比べて暖かいね。」
そんな他愛のない日常会話から、先日の飲み会の話になった。
「飲み会、大変でしたね。あの時は見てるだけしか出来なかったな。」
僕もあの時はよく行動出来たな・・と思っていたので、その事を伝えると、
「ああいう風に行動できる事がすごいです。尊敬しちゃいます!」
あまり女性に褒められたことがなかったので、舞い上がってしまった。
そのノリで彼女に食事に誘うと、嬉しそうにOKしてくれた。
女性に褒められ、お誘いも受け入れられた事が二重に嬉しく、ミユキに報告すると、
「やったじゃん!誘ってあげてくれてありがとう。」
こちらこそ嬉しい限りです・・と心の中で思った。
仕事帰り、夕飯を二人で食べながら、いろいろな事を話した。
学生時代や趣味の事、好きな音楽等も。
楽しい時間は過ぎていき、次回の約束をして彼女を見送った。
次の日から仕事にかこつけて、彼女とよく話をし、二人で会う回数を増やし、
遊園地や映画、コンサート等お互いをよく知っていった。
気が付けば、職場にはバレバレだったらしく、周りの人たちも温かい目で見てくれた。
ある一人を除いて・・・。
俺の理想の女性だと言われ

アイは優しい女性だ。
誰とでも分け隔てなく接する事が出来る女性だ。
僕とアイはその後もよく二人で出かけていたので、変化に気づかなかった。
僕と同じくらいナオキと話している。
僕と同じように笑顔で。
そして、僕とアイが話をしていると、微かだが視線を感じるようになり、
そこにはいつもナオキがいた。
その頃から少しずつアイとの会話にズレが生じるように感じた。
僕は変わっていない・・そう思っていた。
アイとナオキの二人に目が行くようになった。
いつしか僕と会話している以上に彼女の笑顔が見える。
今思えば間違いなく嫉妬だった。
僕は今まで女性とお付き合いした事がない、要するに非モテだ。
悶々とし、告白しなきゃ・・と思いながら日々を過ごしていった。
いつしか二人で会う事も少なくなっていった。
そして、その時は訪れた。
僕はナオキに呼ばれた。
「俺はアイに告白する。彼女は俺の理想なんだ!」
そう言ってナオキは出ていった。
僕はあっけにとられていたが、これはだめだ!と思いナオキを追いかけた。
見つからない!
結局夕方になっても二人に会う事はできなかった。
今思う事

翌日、アイにナオキと付き合う事になったと告げられた。
僕の初めての彼女になってくれるかもしれないとの想いは砕けた。
僕はその3か月後、会社を辞めた。
すべてをリセットしたかった。
そのおかげか、転職先の後輩と付き合って結婚する事になるのは後日談。
アイに想いを伝える事ができなかった事が、次に活かされた感じだ。
やらない後悔よりやる後悔。
心に決めた出来事だった様に思う。
yakuruto著






























