初恋の子の名前はミキ。高校の同級生だ。
俺は大学を卒業するまでに両手で数えるくらいの女の子と付き合ったけれど、ずっと初恋の子が忘れられなかった。
今でも覚えている。ミキは笑顔が可愛くて、勉強はちょっとできなかったけど、テニスが得意だった。
性格は明るくて誰とでも仲良くなれる。少しお調子者なところもあるけれどみんなに好かれるタイプだった。ミキとは同じテニス部で、よく一緒に帰った。
もしも告白していれば・・・俺の人生は違ったのだろうか。
同窓会

30才の時に同窓会が開かれた。
地元を出て東京の大学に進学した俺は、卒業後そのまま就職した。
久しぶりに地元に帰り同窓会に出席することになった。
「りょうた?」
そこで久しぶりに会ったのは初恋のミキ。
あの頃より少し痩せていて、当然かもしれないが落ち着いた印象が見える。
「久しぶりだな、ミキ」
「久しぶり、こっち帰ってたんだ?」
「ああ、ミキは今何してるんだ」
「私は介護の仕事をしてるよ。りょうたは?」
「俺は営業マン。毎日へとへとだよ」
10年ぶりに会ったけど久しぶりな感じはしなかった。スムーズに会話は続き、まるで一ヵ月ぶりの再会のようだった。
今までの人生

ミキと話して分かったことは、ミキはバツイチで二人の子供がいるらしい。
シングルマザーとして介護の仕事をし、一人で子供を育てていると!
未だ独身の俺にとって、考えられないことだった。
「苦労してんだな、ミキ」
「ん~・・・まあね」
ミキは控えめに笑った。高校時代はいつもケラケラ笑っていたミキが、こんな風に笑うのは初めてだった。俺と別れてからの空白の時間が、ミキの人生に様々な試練を与え、こうして控えめに笑うようになったのだろう。
「彼氏はいないのか?」
「いないよー。子供育てるので精一杯。りょうたは?」
「俺もいないよ。俺は仕事で精一杯」
「そっか。こっち戻る気はないの?」
「今のところはないかなぁ」
たわいもない会話をしながら飲む酒は美味かった。どこか影のあるミキは綺麗だと思ったし、あの頃には決してなかった大人の色気が漂っていた。
告白

酔いも大分回った頃、ミキは呂律の回らない口調でこう言った。
「わたし、りょうたのこと本当は好きだったんだよね」
ミキはケラケラと笑い、レモンサワーを飲む。その笑顔は高校時代に見たミキの笑顔と同じで嬉しくなる。
しかし俺はとても笑える心境ではなかった。
俺だってミキがずっと好きだった。今でもきっと・・・だって、こんなにも忘れられないのだから。
「ミキ、俺もお前が好きだった」
「わたしたち両思いだったんだー!じゃああの時、告っとけばよかったなー!」
またしてもケラケラとミキは楽しそうに笑った。
「良かったら俺と付き合わないか?遠距離になるけど、休みの日は会いに来るよ」
「え・・・」
しかし、俺の言葉でミキは黙ってしまう。
どうしてだろう。俺のことが好きだったのなら喜んではくれないのか。
「ごめん・・・」
「なんで?彼氏いないんだろ?」
「そうだけど、今は子供が一番だからさ」
「それでも構わない。俺もミキの子供に会いたいよ」
「・・・りょうた。気持ちは嬉しいけど、私はあんたのこと綺麗な初恋のままでいたいよ」
それからミキはぽつりぽつりと話し出した。
元夫は酷いDV男だったこと。
いつも殴られ、蹴られ、酷い時は骨折をしたときもあったこと。
そして、家計が苦しいながらも、やっと今の平凡な生活を手に入れたこと。
もうこれを手放したくない。
まだ男は信じられないでいる。
何より、俺のことは今でも好きだから付き合いたくない。ずっとずっと、綺麗な恋でいて欲しい。
ミキはそう言った。
「りょうたはイイ男だからさ、私みたいなバツイチシングルマザーより、都会でいい女の人見つけたほうがいいよ」
「ミキ・・・」
「でもありがとう。好きだよ、りょうた」
そう言って笑ったミキは、やはり高校の時とは違う、綺麗な大人の笑みだった。
その後

あれから5年後、俺は東京で結婚して、子供も生まれた。
そして40才の同窓会の時に再び地元に帰った。
「りょうたー、久しぶり」
話しかけてきたのはミキだった。10年ぶりに見たミキは少しふっくらしている。
「なんかりょうた太ったね」
「そうかな」
「うん、貫禄出てきた」
「一応二児のパパだからな」
ミキは少し驚いた顔で、でも嬉しそうに笑ってくれた。
それから、ミキはシングルファザーだった人と再婚して、今は自分の子供と、旦那さんの連れ子と、旦那さんとで幸せに暮らしていると教えてくれた。
ミキの屈託なく笑う顔を見て思うのは、あの時、俺たちの決断は間違っていなかった。
やっぱり初恋はずっとずっと美しい。
mkdfkdfl254著





























