恋多き女

これは、私の友人の話だ。
幼い頃からの友人で、いわゆる親友と呼べる彼女は、恋多き女だった。
そんな彼女が1人の男性と結婚した。ずっと親友として傍にいた私は、彼女が結婚するまでたくさんの恋愛相談をされてきた。
そんな彼女の恋愛歴をほとんど知っている私にとってその男性との結婚は予想外だった。
「この結婚はうまくいかない」
正直、結婚すると聞いた時は素直にそう思った。
最初の出会い

彼らの出会いは学生時代、相手は5つ年上だった。バイト先の先輩だったらしいが、出会いについてはあまり彼女から聞いた事がない。
というのも、当時彼女は同じクラスの男の子に恋していて、それは盲目的と言っていい程だった。
学校帰りにはよくカフェに呼びだされて、延々とその男の子の話を聞かされたものだ。
朝挨拶ができただの、菓子パンを食べていたのが可愛いだの、よくそんな些細な事で顔を真っ赤ににして話せるものだと、面倒くさい半分、少し羨ましく感じていた。
そんな状態だったものだから、きっと彼女も先輩と出会った時の事はあまりよく覚えていないに違いない。たしか優しいバイト先の先輩がいて、そのおかげでバイトが楽だとか、そういった事を言っていた気がする。
私が彼女からバイト先の先輩の話を初めて詳しく聞いたのは、彼女がそのクラスの男の子に振られた時だった。
冷めた表情

いつものようにカフェに呼び出されて、彼女はこの世の終わりかというほど泣いていた。
無理もない。彼の事を考えると胸が苦しくてご飯が喉を通らないと、本気で言っていた程の恋が終わったのだ。
割と惚れっぽい彼女だったが、ここまで深くはまっていたのを見たのは初めてだった。
相手の一言に一喜一憂して、周りも見えない、その彼しか見えない状態から急に現実に引き戻されたような気持ちだったのだろう。
とても疲れた顔をしていて、何もやる気が出ないと言っていた。
これはしばらく恋愛はこりごりになっただろうなと思ったが、その数日後彼女からまた連絡があり、なんと彼氏ができたという報告だった。
その彼氏というのがバイト先の先輩だった。幸か不幸か、彼女が盲目的に愛していた彼に振られた直後、先輩は告白してきたという。
例の彼に振られ、寂しさのあまり特に何も考えずOKしたらしい。その時の彼女の顔は、恋をしていた時と打って変わって冷静な、冷めた表情をしていた。
好きでも嫌いでもない

そして先輩と付き合うようになりその先輩についての話を聞けば聞くほど、私はとても複雑な気持ちになった。
というのも、もちろん人から聞いた話だけで相手を判断してはいけない事はよくわかっているが、中々先輩は癖のある人物だったのである。
簡単に言うとギャンブルが趣味であったり、仕事を転々としたりと、少し地に足のついていない人だった。
悪い人ではないようであったが大切な友人を任せるには少し頼りなく、正直何故付き合っているのだろうと心の中では思っていた。
ただ私自身は直接会った事はなかったし、人の恋愛事情に必要以上に首を突っ込むものではない。
何より、冷めた表情で付き合った報告をしてきた彼女は、ずっと同じ調子だったのが1番の理由だった。
惚れっぽくて彼氏や好きな人ができると、すぐに相手の事が大好きになって目をハートにする彼女が、先輩に対してはずっと「冷めて」いた。
好きでもない。でも嫌いでもないといったところだろうか。
そこまではまっていない相手なら別れるのも時間の問題。そっとしておこう。そう思った。
幸せな結婚とは

きっとすぐ別れるだろう。そう思っていたのに彼らのお付き合いは数年から十数年と続き、そして結婚にまで至った。
正直今でも不思議でしょうがない。どうして彼らの結婚はうまくいったのだろう?あんなにたくさんの恋をしてきた彼女は、冷めた表情から始まった先輩と結婚して、今とても幸せそうである。
少し思う事は、彼女が先輩以外と恋愛していた時は、いつも疲れていた。感情を爆発させて、振り回して振り回されて、いつも酷く辛そうにしていた。
しかし先輩との恋愛は、彼女はいつも穏やかだった。歓喜する事もないが、悲しい事もなく、いつも笑っていたように思う。
まだ独身の私は、「うまくいく結婚」とはなんなのか、いまだによくわからない。しかしなんとなく今幸せそうな彼女をみて、少し、わかりそうな気がした。
nyjhjs著





























