学校での出合い

誰よりも近くて誰よりも遠い人

「私結婚するんだ、、」

本当は何よりもおめでたい報告。

でも、目の前には言いづらそうに話す、ひとみの姿があった。

この報告を受けてから、僕はひとみと会うことはもちろん、連絡すら取っていない。

誰よりも近かったはずの女性が誰よりも遠い人になった。

理由は簡単で僕に勇気がなかったから。

 

出会い

ひとみは中学1年生の2学期に転校してきた。

名簿順の都合でひとみは僕の隣の席。

ショートヘアーで声の大きい女の子、これが第一印象だった。

先に仲良くなったのはお互いの母親同士。

僕らの母親はどちらも学生時代、強豪校のバスケ部に所属していて何度も県大会で対戦していたらしい。

その子供同士が中学校で一緒のクラスとなり、隣の席になっているという変な巡り合わせが起きていた。

そんな両親の事情からいつしか家族ぐるみの付き合いとなり、学校はもちろんお互いの家でも顔を合わせることが多くなった。

ただ、中学生という思春期真っ盛りの頃だったから、お互いの家に行っているなんてなるべく周りにバレたくなかったし、あんまり必要以上に話すと変な噂を立てられそうだったので学校ではお互いそっけなくて家族同士で会うとずっとバカみたいにふざけあうっていう不思議な関係だった。

お互い恋愛感情なんてなくて最高の友達、これが当時抱いていた僕のひとみに対する感情。

当時の自分はこの関係とこの感情が永遠と続くと思っていた。

感情の変化に気づいたのはひとみに初めての彼氏ができた高校に入ってからのことだった。

 

感情の変化

僕らは相変わらず高校に入学してからも親友のような関係が続いていた。

いつの日からか、家族ぐるみの付き合いがあることもオープンとなり、僕らの関係が恋愛ではない、ということもほとんどの人の共通認識となっていた。

お互いの恋愛のことも全て知っていたし、多分瞳は女友達に話せないことも自分に話していたと思う。

高校2年の時だった。

ひとみといつも通り話していると

「彼氏ができたんだ!!」

と嬉しそうに報告してきた。

気になっていた先輩から告白されたらしい。

付き合う前から先輩との話は聞いていたので、おめでとう、と気持ちよくお祝いできたらよかったんだけど、僕の感情は全く違った。

すごくカッコ悪いんだけどすごく悔しかった。

だから、取るべき正解のリアクションは頭に浮かんでいるのに全然体が付いて来ない。

そのリアクションに驚いたのはひとみだけでなく、僕も同じ。

この時に気づいた気持ちをどこかのタイミングで言葉にしていたら、未来は変わったかもしれない。

 

お互いの気持ち

高校卒業を控えた高校3年の秋。

受験を控えていた僕らは時間の大半を勉強に費やしていた。

そんな中だけど、僕らは2人の時間を過ごしていた。

一応書いておくと、その当時の僕らには恋人はいない笑

これまでも2人の時間はいくらでもあったんだけど、これまでとは全く違う。

今考えると、お互いの感情が側から見ても丸わかり。

朝6時にみんなが来る前の学校で一緒に勉強したり、帰り道一緒に帰ったり、ほぼカップルみたいな関係性。

当然、僕らもお互いの気持ちはなんとなく分かっていた。

僕は東京の大学を目指していて、ひとみは県内の大学を目指していた。

今は受験勉強しなきゃいけないんだし、万が一付き合えたとしても遠距離、そうなるくらいだったら、、、なんて考えて自分の気持ちは伝えずにいつもごまかしていた。

数ヶ月後、僕の大学合格を伝えたときのひとみの寂しそうな顔は今でも鮮明に覚えている。

 

ひとみの言葉

僕らはそれぞれ希望の大学に運よく進学することができた。

必然的に会う回数はめっきり少なくなり、会うのは僕が地元に帰るタイミングだけ。

その日、僕は冬休みで地元に帰って高校のクラスメイトとお酒を飲んでいた。

その中にはもちろんひとみもいた。

場もお開きとなり、帰り道ひとみと2人になった。

「大学卒業して仕事したら絶対出会いなんてなくなると思うんだよね。

だからさ、お互い卒業のタイミングで恋人がいなかったら付き合お笑

親もその方が安心するでしょ笑」

ひとみからの突然の言葉だった。

冗談まじりに話してはいたけど、冗談でないことは明白だった。

本当に勇気を振り絞ったんだと思う。

でも、当時の僕は東京に彼女がいて、ひとみの存在が頭にないわけではなかったけれど僕の中では過去に好きだった女性になっていた。

だからこそ、今でもひとみが自分を想っていてくれたことが驚きだった。

僕はこの時、ひとみの言葉に真剣に答えることをしなかった。

「いやいや、今俺彼女いるしさ笑

それにひとみにもいい人出来るよ!

俺らが付き合うなんて笑っちゃうじゃん笑」

最低だったと思う。

真剣に答えることはせずにはぐらかしただけだった。

また、僕は東京の生活へと戻っていった。

 

報告

ひとみはSNSをやらない。

だから、彼女に関する情報は今まで彼女本人から聞いていた。

東京に来てからは頻繁に連絡を取り合うことはなかったんだけど定期的な連絡は途切れることはなかった。

しかし、冬の一件以来、お互いそっけなくなって連絡頻度も明らかに減り、大学卒業してお互い仕事が始まると連絡すら取らなくなった。

そして、社会人4年目の年末、久しぶりに高校のクラスメートで集まった。

その飲み会に向かう最中、車で飲み会に向かうひとみと偶然にも会った。

正直、社会人になってからは会うことはなくなっていたので、5、6年ぶりの再会だった。

あれだけの時間を共に過ごしたのにひとみとの距離感が掴めない。

そんなぎこちない距離感の中で彼女は唐突に話し出した。

「伝えたいことがあったんだよね、、

私結婚するんだ、、」

人は失った時に本当の大切さに気付く。

「そっか、、

よかったじゃん、、おめでと、」

素直にお祝いできない自分がいた。

どうしてなのかは今の自分にもいまいち分からない。

少なからず、僕の中にはまだひとみへの気持ちがあったんだろう。

その後の飲み会は、自分でも驚く位ひとみのことを目で追っていた。

あれから、僕はひとみとは連絡は取っていない。

会う事もないだろう。

タイミングとか状況とかに言い訳せずに自分の気持ちを伝えていたらもっとマシな結末を迎えられていたのかな。

僕は何かに言い訳をつけて、真剣にひとみと向き合うことをしなかった。

でも、後悔してももう遅い。

僕は前を向いて、自分の人生を生きることにした。

 

olsiie著

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