職場での出会い

真実の嘘:何故女子高生の告白はかなえられないの!

あの嘘は、本当に正しかったのだろうか?

10年経った今でも、ふと思い出して胸が苦しくなる。

彼女にとって、そして俺にとって、あの嘘は俺たちを前に進めたのだろうか。

最初の冬

「それでもいいから」

泣きそうな目をして返事をする彼女に、俺は上を向いて深く息を吐くしかできなかった。

 

今年で2年目となるスキー場でのアルバイト。

そこで出会った高校生のフミカと、俺は交際をすることになる。

 

フミカと初めて出会ったのは、彼女が高校2年生の時。

俺にとっては、地元を離れて、そして大学に入って最初の冬休みだった。

その期間、俺はスキー場でアルバイトをすることになった。

 

アルバイト先での仕事は、すべてフミカから教わった。

フミカは地元の学生で、高校1年生からここで働いている。

住み込みだったので、文字通り付きっきりで教わった。

 

それこそベッドシーツの敷き方やスキーの滑り方、地元の観光地まで。

彼女は、先輩風を吹かせるわけでも、姉御肌があるわけでもなかった。

ただただ人の面倒見が良く、とにかく誰にでも優しい女の子だった。

 

年齢差は2つ、俺が大学生1年生で、フミカは高校生2年生。

たった2歳しか違わないが、大学生と高校生の2歳差は大きい。

それでも精神的には、俺より1枚も2枚も人生の先を歩いていた。

アルバイトの打ち上げで、フミカは俺と同じ大学を志望していることがわかった。

俺が通う学校は、片田舎とは言え、地元では有名な国立大学だ。

彼女が通う高校の偏差値からすれば、相当に頑張る必要があった。

 

このスキー場でのアルバイト期間3ヶ月、俺は何度も彼女に助けられた。

何かしてやれないか。そんな矢先だった。

 

アルバイト最終日での打ち上げの席。

「私もK大に行きたいんですけど、ぜんぜんダメで」

「ははは、じゃあ俺が次の冬まで勉強教えてやろうか?」

 

9割は冗談のつもりで言ってみたが、彼女は本気だった。

なぜなら、ここはド田舎。塾なんてなかったからだ。

 

仕事を要領よくこなす彼女だけあって、模擬試験の結果はグングン伸びた。

彼女が3年生になった冬には、あっという間に進学組のトップクラスに追いついていた。

 

そうこうしているうちに、季節は夏の終わりに差し掛かっていた。

「今年は違うアルバイト先に応募しようかな」

そんな風にぼんやり考えていると、フミカからメッセージが届いた。

 

「今年も一緒に働きましょうね!」

正直、あまりノリ気じゃなかったけれど、

彼女に流されるように、俺はスキー場に応募した。

2度目の冬

俺は、2年目の冬もスキー場で迎えた。

この頃には、フミカ含めて多くのスタッフとも打ち解けていた。

 

男性スタッフだけで飲みに行ったり、時には男女スタッフで恋愛話に花を咲かせたり。

フミカに流されるまま応募したわりには、楽しめている俺がいた。

 

そうして迎えたアルバイト最終日。

昨年以上に盛り上がった打ち上げの帰り道だった。

フミカを送るために、彼女の自宅へ向かっていた。

 

今日の打ち上げが楽しかったからか、フミカはいつもより口数が多く、

とても楽しそうに話をしていた。

 

そして彼女の自宅近くの公園で、俺はフミカから交際を申し込まれた。

「1年前のアルバイトの頃から好きでした。付き合って欲しいです」

 

俺からすればバイトの先輩であり、また家庭教師の生徒。

それ以上でも、それ以下でもなかった。

何より俺には、大学へ入学した頃から思いを寄せる女性がいた。

ただし、女性には交際相手がいて、誰にも言えずに秘めた想いだったが。

 

「俺、大学に好きな人がいるんだ。ごめん」

 

スキー場でのアルバイトも今年で最後だな。来年から何しようか。

勇気を振り絞るフミカの前で、そんな関係ないことを考えていた。

 

「それでもいいから」

泣きそうな目をして返事をする彼女に、俺は上を向いて深く息を吐くしかできなかった。

 

「わかった」

「それでもいいなら」

4度目の冬

卒業間際の2月。

4年目となるアルバイトが、今年も終わろうとしていた。

 

「好きになれればいいのに」

ずっとそう思っていた。

けど、その想いを消し去ることができずに、付き合って2年が経過していた。

 

今年の春から俺は、就職でこの町を離れることが決まっていた。

そして彼女もまた、今年から就職活動が始まる。

「もう終わらせないと」

 

俺にとってフミカは、はじめての交際相手だった。

しかしそれが、決心を鈍らせていた。

俺はフミカのぬくもりに甘えていた。

 

彼女を傷つけている。それは分かっていた。

抱き合っているのに繋がった気がしない。

その想いは、日を追うごとに増していった。

 

4年間のスキー場でのアルバイトが終わった。

打ち上げの帰り道。

俺たちは、2人の交際が始まった公園を歩いていた。

 

「フミカ。もう会えない」

わずかな沈黙のあと「そっか」とフミカはぎこちなく笑った。

 

「最初から分かっていたことだもんね」

「気にすることないよ」

 

彼女の自宅は、公園を横切って5分歩いた先にある。

もうすぐ途切れる芝生の手前、俺は立ち止まった。

 

「卒業する前に、ずっと好きだった女性に思いを伝えたいんだ」

「ごめん」

そんな言葉しか絞り出せない自分が申し訳なかった。

 

「あなただけが悪いわけじゃないから」

俺を赦すような言葉が痛かった。

彼女はやはり、俺よりも精神的にたくましい。

 

正直、フミカをなくすのは惜しい。

俺にとっても2年だ。短い期間じゃない。

情だってある。

 

でも、終わらせないと。

 

フミカの自宅までは、まだ3分ほど歩くだろうか。

今ならまだ間に合うかもしれない。

 

撤回するか?

いや、でも・・・それは・・・けど。

 

彼女の自宅の前、俺たちは握手だけして、別れを告げた。

5度目の春

地元を離れて、5回目の春を迎えようとしていた。

俺は4月から始まる新生活に向けて、すでにあの町を離れていた。

あれからフミカとは、1度も連絡を取っていない。

 

同じ大学といっても卒業前の4年生と、現役バリバリの2年生。

キャンパスでも顔を合わすことはなかった。

 

入学の頃から思いを寄せていた女性。

彼女には俺の秘めた想いを伝えずに、そのまま卒業した。

 

「卒業する前に、ずっと好きだった女性に思いを伝えたいんだ」

 

そんな彼女への感情は、とっくの前に消え失せていた。

とっさに出た嘘だったが、フミカを傷つける言葉には十分だっただろう。

あの日から俺のモヤモヤは、ずっと晴れずにいた。

 

これからも俺は、あの嘘に振り回されるのだろうか。

フミカは、あの嘘で俺を振り切れただろうか。

 

どうか彼女には、前に進んで欲しい。

だってあの嘘は、君に対する情が産んだものだから。

 

せめて、彼女だけでも。

n55ijsl著

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