職場での出会い

50才と19才の恋愛

今から10年ほど前。某お笑い芸人が45才も歳が離れた若い女性との結婚で世間は話題になった。

私と彼の恋はその二人の騒動が起こる数年前のこと。流石に45才も歳は離れていなかったけれど、彼は私の母より年上だった。

そんな年上の彼にドハマりしたのは・・・私の方だった。

出会いは大学一年生


まず初めに。私の生い立ちからお話します。

 

私の名前はるみ。茨城県出身の三人兄妹の末っ子。

父はギャンブル依存症で世間からすればろくでもない男だった。

私が中学生の時に離婚。母が女手一つで愛情を持って育ててくれたおかげで、みんなグレることなく真っ直ぐに育った。

家は裕福ではなかったけれど、どうしても大学に行きたかった私は奨学金を借りて東京の大学に進学したと同時に、アパートを借りて一人暮らしを始めた。

しかし、学費、家賃、生活費諸々。とてもじゃないけど、奨学金とバイトだけでは払いきれない・・・

そんな私が選んだのは水商売(スナック)だった。

当時アゲ嬢という女性が大流行した時代。キャバクラよりは稼げないけれど、普通のバイトよりかはずっと時給は良かった。

そこで出会ったのが会社の社長である彼、50才の吉田さんだった。

彼はお店の常連さんで毎回多額のお金を落としてくれる・・・いわば太客(ふときゃく)だ。

50才でも流石は会社の社長。見た目はとても若々しく、スーツがとても似合っている。

ギャンブル依存症の父を見てきた私は、スーツの似合う仕事ができる男に弱かった。

 

それは初めて彼を接客した時のこと。

「るみちゃんっていうの。大学に通いながらバイトしてて偉いね。よろしくね」

彼は、社長なのに飾らない人柄。オジサンなのに少年のような笑顔。

でもやっぱり大人で、私を褒めてくれた。

それから毎回、私が欲しい言葉をかけてくれる。

今思えば私は彼に、父親の愛情のようなものを求めていたのかもしれない。

私はいつしか彼が店に来るのが待ち遠しくなっていた。

交際スタート

話していくうちに分かったのは、彼はバツイチでもうすぐ高校生になる子供がいるということ。

でもそんなのはどうでもよかった。離婚してるなら関係ないと思った。

 

出会いから3か月ほど経ったある日。

アフターで店の女の子たちと吉田さんとその部下で呑みに行った時。

帰り道、私と吉田さんは同じタクシーで帰ることになった。

「るみちゃんに俺の女になって欲しいな」

「え・・・」

「好きなんだけど。オジサンじゃダメ?」

「ダメじゃないです。吉田さんの彼女になりたい」

そのままタクシーの中でキスをした。今思えば運転手さんがいるのになんて大胆なことをしたんだろうと思うけれど。

そんなことはどうでも良かった。私は周りが見えなくなるほど彼に溺れていた。

 

その日から私と彼の交際が始まり、彼は私の大学にベンツで迎えに来てくれるようになった。高級なプレゼントも買ってくれた。

彼に見合うように私もオシャレをして、綺麗でいようと努めた。

そんな私は大学で一目置かれるようになり、ベンツで迎えに来てくれるお金持ちの彼氏がいることにも優越感を抱いていた。

毎日ドキドキして、恋をして、とても幸せだった。

しかし、幸せは長くは続かなかった。

 

おかしいと思い始めたのは、お店に新しい女の子が入って来た時だった。

その女の子の名前はひとみさん。30才。見た目は女優さんのように綺麗な人だった。

芸能人で例えるなら、満島ひかりさんのような容姿だった。

ひとみさんが来てから、彼がお店に来店する時は、私ではなくいつもその女の子と話すようになった。

私はモヤモヤして、逃れようのない胸騒ぎがした。

そして極めつけはその女の子の態度。

彼女は私への当たりだけ強かったのだ。お店に行くのが辛くなっていた。

 

そして交際して1年ほど経った私の記念すべき20才の誕生日のこと。

彼がお祝いをしてくれた。

オシャレなレストランで、ケーキのサプライズもあった。

こんなことをしてもらったのは人生で初めてのことだったので勿論嬉しかったけれど、どこか彼の様子が変なことに気付く。

「・・・ねえ、なんか元気なくない?」

「そうかな?」

「うん、楽しくなかった?」

「いや・・・なんか。るみがまだ20才なんだなって改めて実感したというか・・・」

嫌な予感がした。

今更?と思ったけれど、怖くて何も聞き返せなかった。曖昧に笑ってその日はさよならをした。

しかしその後、そのことを大きく後悔することになる。

音信不通

私の誕生日の日から彼とは連絡がとれなくなった。

メールも無視され、電話も出てくれない。

お店には来ているみたいだけど、私が休みの日に来てると聞いた時はショックだった。

大学では私の事情を知る数少ない友達に泣きついて慰めてもらう日々。

大学に行くのもしんどかった。辞めたいって思った。

もうこの時にはすでに彼の心の内が分かっていて、きっと彼は自然消滅を狙ってることが感じ取れる。

それでも、このままじゃ嫌だ!と思った私は彼にメールでこう言った。

『このままじゃ嫌なのでちゃんと話をしたいです。別れたいならけじめをつけましょう。このまま音信不通になるなら、会社に直接行きます』

彼から返事が来た。

『ごめん。会って話そう』

 

数日後、彼とファミレスで会うことになった。

「どうしてメール無視してたの?」

「ごめん」

「ごめんじゃないわよ。私は別れたくないって言ってるんじゃないの。別れるならちゃんと別れ話をしようって言ってるの」

嘘。本当は別れたくなんかない。だって大好きだもの。

でも、私は彼の前ではいつでもいい子ちゃんでいたかった。

それはまるで聞き分けの良い子供のように。

「ごめん。別れたいわけじゃないんだ。ただ・・・少し考える時間が欲しい」

彼はこの期に及んでもそんなことを言った。

それでも私は彼が「別れよう」と言わなかったことに安心して、そのままファミレスを後にした。

帰り道、泣きながら「彼を信じよう」と思った。大丈夫。私たちは大丈夫。

だって、こんなにも大好きだもの。

 

結末


その後私たちはどうなったかというと・・・

終わりはとても呆気ないものだった。

あれから、結局メールも着信も無視。もう二度と会うことはなかった。

本気で会社に乗り込んでやろうと思いはしたけれど、彼のことが大好きだった私は鬱状態になって結局仕事も辞め、そんな気力もない。

毎日泣いてばかり。

そしてお店を辞める時。仲の良かった女の子にそれとなく聞いたところ、

「吉田さん、ひとみさんと付き合ってるみたいよ」

それを聞いた時は目の前が真っ暗になった。でも、心のどこかで『あぁ、やっぱり・・・』という気持ちだった。

彼は浮気していたのだ。だから私への態度がおかしくなった。

恐らく、50才からしたら20才より30才の綺麗な女性の方が良かったのだろう・・・

私はまだ子供すぎた。

彼女の方が何枚も上手だったのだ。

しかし、その話を聞いていたお店のママが口を挟む。

「ひとみも馬鹿ね。あの人、奥さんも子供もいるのに」

「え?でも別れたって言ってましたよ?」

「そんなの嘘に決まってるじゃない。女を口説きに来てるのに、馬鹿正直に嫁と子供がいるって言う男がどこにいるもんですか」

 

それはショックやら怒りやら焦燥感、全部が押し寄せてきた瞬間だった。

私のこの1年と少しはなんだったのか。

最初から、私は彼の一番ではなかった。

ずっと騙されていたのだ。

大学生という華々しい時期を、ろくでもない男に捧げてしまったことが悔しくて悔しくてたまらなかった。

でもどうすることもできない。これが漫画やドラマなら「復讐してやる!」と燃え上がる展開かもしれないけれど、現実はそうはいかず・・・

失恋のショックが大きすぎて、そんな気力も体力もなかった。

 

それから


「もう生きていたくない。大学を辞めたい」と言った私に、ずっと慰めてくれていた大学の友達が「失恋なんかで絶対に辞めるな。くだらない男のせいで人生台無しにするな!」と言った。

失恋直後は毎日泣きながら通学したけれど、その言葉に励まされてなんとか無事に大学を卒業。

なんとも痛々しい大学生。でもそれほど私は彼にハマっていたのだ。

今思えば、その友達に本当に感謝。卒業して良かった。

その後は大手企業に就職し、今の夫と出会い結婚。

現在は専業主婦をして小学生の子供を育てている。

正直言って今の私は、水商売をしていた頃の面影はゼロ。

普通のそこら辺にいる地味なおばちゃんだ・・・水商売してたって言ったら驚かれるだろう。

そこに関しては少し悲しいかな(笑)

今となっては、自分の母より年齢が上の男性が、まだ19歳だった女の子に手を出すなんて・・・と思えるほど私も成長した(決して歳の差恋愛を批判しているわけではありません。某芸人さんのように幸せな夫婦もいますから!)

それに、愛する夫と子供に恵まれて、あの時彼から捨てられて逆に良かった!と思えるくらいには幸せな生活を送っている。

でも、10年以上経った今でも当時の大恋愛は思い出すし、もしあの頃違う選択をしていれば・・・彼に泣いて縋っていれば、今はどんな生活を送っていたのだろう・・・と思うことも少なくはない。

ただ、今の幸せを手放さないように、悲しい失恋ではあったけど、これも一つの経験として大切に心の中にしまっておきたいと思う。

mowhgo著

出会い系マッチングサイト情報