彼女の妊娠

僕は今新婚だ。
だが、妻とは一緒に住んでいない。
半年前に子供も生まれたのだが、妻はまだ実家から帰ってこないのだ。
もともと僕たちは、知り合いを通じて知り合った。
その頃僕は、前の彼女と別れてさみしかったので、新しい出会いを求めていた。
そんな時に紹介されたのが彼女だった。
僕は、「守ってあげたい」タイプで、今までの彼女もみな守ってあげたくなるような人たちだった。
彼女もまたそういうタイプだった。
そんな彼女と付き合いだして半年ほどしたころ、彼女から妊娠したと告白された。
僕は正直戸惑った。
彼女のことは好きだったが、まだ結婚までは考えていなかった。
話を聞いたときは頭が真っ白になった。
しかし彼女は産みたいという。
どうしたらいいのかわからなくなった僕は、父親に相談した。
家族
Four pieces of puzzle with letters ADHD on black background. ADHD is Attention deficit hyperactivity disorder.僕は少し複雑な過程で育った。
本当の両親は、僕が小さいころに離婚し、僕は父親に引き取られた。
あまりに小さかったので、本当の母親の記憶はほとんどない。
僕にとっての母親は、6歳の時に父と再婚した義母だ。
義母の話によると、僕は小さなころから少し人と違うところがあったそうだ。
幼稚園の年長になっても、人の列に並べなかったり、ダンスの輪の中にいられなかったそうだ。
そのうえ、小学校に入ってからも、祖父からお金をくすねたり、お店から飴玉を採ってきてしまったり、やってはダメだと言われたこともやってしまう子供だった。
遊びに夢中になり、約束の時間を大幅に遅れて帰宅して何度も怒られた。
しかし、これらのことで怒られていた時の僕は、何がいけないのか、どうして起こられているのか全く分からなかった。
そんな僕を心配した両親は、僕をある医者の所に連れて行った。
僕はADHD(注意欠陥多動性障害)だったのだ。
その事実が分かったのは小学校3年生の時だった。
両親は、学校や周りにそのことを知らせ、フォローを頼んでいた。
おかげで僕は、周りから理解され、暖かく見守られて、まともに育つことができた。
そうしてくれた義母には、もちろん感謝している。
だからこそ、彼女の妊娠のことは義母には相談できなかった。
父の言葉

父は自分が若いときに、今の僕と同じ状態になり結婚したが、結局離婚することになった。
そのため、僕が父に相談した時は、烈火のごとく反対した。
僕はすぐに頭が混乱し、深く考えることができなくなる。
そしてこの時父が言った言葉を、正直に彼女に伝えてしまった。
それによって彼女に、僕の父と母がとても怖い人間であるという印象を持たせてしまったのだ。
困った彼女は、兄に相談した。
ところが妹への仕打ちに怒った兄が、彼女の両親に話をしてしまった。
誤解が誤解を生んだまま、今度は怒った彼女の父親に僕は呼び出された。
そうなってしまうと、もう僕の頭の中は真っ白だ。
彼女の父親は頑固おやじのような人で、「娘を傷つけた。どう責任を取るのか」と僕を責めたてたのだが、僕は何を言ったのかも憶えていない。
悪循環でしかない。
困り果てて義母に相談した。
義母は昔から厳しかったのだが、いざと言う時はきちんと相談に乗ってくれた。
父から話を聞いていたという義母には、どうするかは自分自身の問題であること、とにかく一度彼女を連れてくるようにということを言われた。
僕は彼女に、一度両親に会ってくれないかと相談した。
何度か機会があったにも関わらず、彼女は体調が悪いことを理由に、僕の家族と会うのを拒んでいた。
最終的には何とか彼女を説得して、実家に連れて行った。
彼女も両親の前ではなんとかうまく振舞ってくれたので、両親の反応はまずまずだったので、一安心した。
その時に義母が彼女に僕がADHDであることを話したのだが、実は僕は彼女にその事実を話していなかった。
ADHDである僕と一緒になる自信と、もしも生まれてくる子供が同じ状態でも対応できるのかということを聞いていた。
彼女との未来

義母と話をしている時は、普通に話を聞いていた彼女だったが、実は驚いていたようで、そのことを両親に話したようだ。
その後彼女の両親に呼び出された僕は、僕の障害について説明させられた。
僕が上手く説明できなかったために、彼女の父親はますます僕を疑問視するようになった。
お腹の子供はどんどん大きくなる。
結局、入籍はしたが、彼女の父親は、僕と一緒に住むことを許さず、彼女もまだ僕と住む自信がないといってそのまま実家に住み続けた。
その後、僕と彼女は一度も一緒に住むことないまま、子供が生まれた。
もう半年になるが、いまだに彼女は実家にいるし、いつ一緒に住めるのかも目途がたっていない。
彼女の父親が、まだ僕とのことを許してくれていないのだ。
時々父から連絡が来て、現状を聞かれ、これからどうする気なのか聞かれるのだが、何も進展がないことしか伝えられていない。
父からは、このままならば離婚することも考えるように言われているのだが、僕はまだ彼女を待ち続けると父には伝えている。
彼女と彼女の両親に、ゆっくりと僕のことを理解してもらい、彼女と子供と暮らせる日が来ると信じている。
opeku著






























