これは、たった1つの後悔を今もなお引き摺っている男の話。
「後悔先に立たず」
この言葉通りの別れを経験した、仕様のない男の大学生の頃の話をしよう。
後輩との出会い

彼女との出会いは2回生の4月、大学で部活動の新入生を勧誘していた時だった。
「あいつの後輩が入部するらしいぞ」
同期の友人の後輩が入部するらしいことを人づてに聞いた私は、敷地内で小さな場所を借りて行っている我が部の交流スペースに足を運んだ。
この時期は毎日のように場を設けているため、授業の空き時間に行ったって会えない人もいる。
「そいつがいなくても誰かいるだろうし暇つぶしにはなるか」
そう思いながら向かうと、タイミングよく彼女はそこで先輩の話を聞いている途中だった。
夢ではない

彼女は数少ない経験者としての入部だったので、必然的に注目を集めていた。
大人しそうな外観だがお洒落で愛嬌も良く、気の利く女の子だった。
ある時、後輩の男に好きな人の話を冗談めかして聞くと彼女の名前が多く上がるほど人気だった。
最初は私も「良い後輩」ぐらいの認識だったのだが、ふれ合うたびに惹かれていた。
何人もが同時に彼女が好きだという展開など、漫画やドラマだけだと思っていたがまさか自分が当事者になるなど思っても見なかった。
これは夢ではないのだ。
告白

私は他人に相談をしたり、頼るということができない人間だった。
暴走することもあるが、自分で解決できることはなるべく自分でやってしまう。
友人にもその点について「溜め込みすぎるな」と叱責されていたのだが、彼女にはどんなに深い悩みの種も打ち明けることができた。
好意はもちろんあったが、どんな内容でも隔てなく相談に乗ってくれる彼女には好意と同じぐらいの感謝をしていた。
そんな中、講義終わりに彼女と二人で何でもない話を終えた後、アルバイトがあるから帰ると言い出した。
「近いし、送るよ」
もう、限界だった。
ここで告白しなければ当分はこんなチャンスも来ない。
意を決して彼女の住むマンションの前で告白をした。
「はい」
「えっ?」
「よろしくお願いします」
実を言うと初めての告白だったために、想像の数倍も呆気ない快諾の返事にひどく驚いた。
それからの2人/暗雲

それからの交際は1つの問題を除いてほとんどのことが順調だった。
将来はコーギーを飼うか柴犬を飼うかで微笑ましく言い合ったり、自分の方が相手を好きだと押し問答をしてみたりもした。
しかし、私は交際において必ず生まれる不平や不満を打ち明けることができなかった。
彼女は思うことがあればその都度冷静に話し合って解決しようと努めてくれた。
だが、喧嘩という喧嘩は何一つとしてできなかった。
私は奥底の汚い部分を見せるのが怖かったのだ。
今となっては、彼女はそれでも受け止めてくれたとは思うが。
行き場の無い不平や不満は、私の中で肥大していった。
別れ

別れは唐突に訪れた。
自分1人の不満を堰き止めていた糸がついに解けたのだ。
「彼女にはもっと彼女を幸せにしてくれる良い人がいるのでは無いだろうか」
そう思えてしまってからは早かった。
その日のうちに彼女と会う予定があり、別れ際に別れを告げた。
「好きな人ができたんだ」としょうもない嘘をついて。
彼女は「別れたくない」と言ってくれた。
こんなに幸せな毎日はそう得られるものでは無いのに、私には自信がなかったのだ。
彼女が彼女以上に私を愛してくれたように、私が私以上に彼女を愛する自信が。
最後の最後には、彼女は泣きながら笑っていたのに。
数年経って

数年経っても私は相変わらず1人で、孤独を楽しむように見せかけて生きている。
あの頃の、自信と覚悟の無かった自分を戒めるように。
未だにあの頃に縋り付いているように。
しかし、あの頃より今が幸せならこうはなっていないだろう。
後悔は一つの行動でその時より不幸せになった時に起こる。
先に後悔できるのなら、幾分かは生きやすいだろうか。
後悔のない人生なら、彼女にも会えなかっただろうから。
klskdfwep著






























