初めて会ったのはもういつの事だか覚えていない。だけど、あいつを男だと意識したのは中学生の時だったと思う。何かの弾みで手が触れたとき、電気が走った。静電気?違う。体の中の細胞が騒いだのだ。
山下とは幼馴染で仲は良かったが、お互い恋に落ちることはなかった。それは、近すぎていつも一緒にいるのが当たり前だったからかもしれない。恋とか愛とかではなく、もう家族みたいなそんな存在だった。だから衝撃だったのだ。
山下は幼馴染だったのに

山下を意識し始めてから、なんとなく私は山下を避けるようになった。いつも通りでいたいのにいられない。あんなに仲良かったのに、今では登下校を一緒にすることもなくなってしまった。そうしてるうちに、山下は他の女の子と一緒にいるようになった。だから私はこの気持ちに蓋をすることにした。そして私は、山下と一言も話すことなく中学を卒業した。
10年たってからの真実
中学を卒業してから10年たった頃、同級会があった。ほぼ、クラス全員が集まったんじゃなかろうか。みんな変わってなかった。やっぱりなんとなく、山下とは離れた場所で座って飲んでいた。そしてあっという間に楽しい時間が過ぎていった。誰かが2次会にカラオケに行こうと言い出した。私は、カラオケはあんまり得意じゃないので帰ることにした。タクシーで帰ろうかなと思ったが、自宅からそんなに距離のない場所だったので歩いて帰ることにした。みんなの輪からそっと離れた。そもそも私はそんなに目立たない存在なので、誰も私が帰ったことに気が付かないだろう。ただ、仲のいい友達には帰ることを伝えた。

夜風が気持ちいい。ちょっと酔ってるのかもしれない。歩き始めて暫くしたころ、ふと後ろを振り返ったら山下がついてきた。「なんで?みんなとカラオケ行ったんじゃないの?」そう訊いたら、「ひとりじゃ危ないでしょ。」と言った。「うん。ありがとう。」とだけ返した。そういえば、今普通に会話してるけど10年ぶりだった。それでもそのあと、久しぶりに会った山下と何を話したらいいかわからず、なんとなく中学の頃の昔話をしながら歩きだした。こんなふうに話すのは本当に久しぶりだった。そんな時、山下が訊いてきた。「あのさ、あの頃、俺のこと避けてたよね?なんで?」あまりにも急で心の準備が出来てなかったので、どう返していいか迷った。だけど、「あの頃、山下のこと好きだった。ずっと、意識してた。だから・・・。」酔ってるせいか正直に言った。「え?俺嫌われたと思ってた。言ってよ。そんなん俺だって・・・。」まさかの返答に困惑した。もしかして、私たち両思いだった?なんだか笑えてきた。それから、失った時間を取り戻すように近くの公園で二人で並んで話した。
10年越しの思いにさよならを
何時間話していたのだろう。空が少し明るくなってきた。夜明けが近い。「そろそろ帰ろっか?」と言いかけたときに目が合った。あ、まずいと思ったが遅かった。どちらからともなく唇を重ねた。そっと触れるだけのつもりだった。それで終わらすつもりだった。だけど、軽く触れただけで電気が走った。やっぱりと思った。でも、もう止まらなかった。10年越しの私の気持ちは唇を通して全開になってしまった。でもどこか切なくて哀しいキスだった。あの頃には戻れない。そんなのお互いがわかっていた。これがさよならになる。離れがたくて、私たちは夜が明けるまで何度もキスをした。

終わったはずの恋なのに
あれからまた10年がたった。あの時の出来事を誰にも言えないまま私は結婚した。もちろん相手は山下じゃない。山下とはあれ以来会っていない。もし今会えたのなら、私は何もかもを捨てて山下に走るかもしれない。そんな怖いことを思った。忘れようとも忘れられない、悔しいけどそれくらい好きだった。私はまた、どこかで何かを期待している。
a675著






