学校での出合い

渡せなかった手紙

私の名前は空。今日は久しぶりに実家に来ています。
押入れの奥から私の荷物が出てきたと母が言うのです。
実家を出てずいぶん経つので、まさか荷物が残っているなんて思ってもみませんでした。

出てきたのは古いダンボールが1つ。
その中を一つ一つ確認していると、丸いお菓子の缶が出てきました。
当時、流行っていたデンマーククッキーの缶です。
硬くなったフタを開けると、そこには、たくさんの手紙が入っていたのです。

懐かしい・・・。
まるでタイムカプセルみたい。

高校時代の友達からの手紙の束を一つ一つ手にとると、当時が戻ってくるようです。
ノートの切れ端だったり、レポート用紙だったり、ちゃんと封筒に入ってるものもあります。
しばらくして、“From 空” という文字を見つけました。
それは私にとって渡すことが出来なかった手紙、そして大きな後悔の手紙だったのです。

ー春ー出逢い

翔(しょう)に初めて出会ったのは高校の入学式でした。
どちらかというと小柄で目立たないタイプの男の子です。
なのに横顔がとても綺麗で、どこか惹きつけられるような不思議な魅力を持っていました。2人の距離が近くなったのは、文化祭の委員を一緒に担当したことがきっかけでした。そして、時々長電話をするような友達へと発展していくのです。

ー夏ー片思い

夏休みになると、私はよく翔の部屋に遊びに行くようになりました。10代の2人ですから、微妙な空気が流れることもあります。とうに私の心は、彼に傾いていました。一緒にいるだけで私は幸せなのです。でも、本音を言えば、ちょっとでいいから触れて欲しい、少しでいいから、少しでいいから、と心の中で呟いていました。
「告白」すればいいのに、臆病な私は彼と友達でいることを選んでいました。だって「友達は永遠」だから。彼の部屋から夕陽を見るたびに「これでいい」と自分に言い聞かせていたのです。

ー秋ー友達は永遠

文化祭の頃になると、翔は急に背が伸びて目立ちはじめました。
クラスの女の子達も彼のことが気になるらしく、熱い視線をおくっています。
私はヤキモキする気持ちを誰にも気づかれないよう、平気な顔して過ごしていました。
ずっと私だけの翔でいて欲しいのに。言葉に出来ない切ない思いは、完全に空回りしていました。
お互いに友達が増えて、少しずつ2人の距離があいていきます。それでも「友達は永遠」だから大丈夫。そう言い聞かせていたのです。

ー冬ーペンダント

12月24日。
翔に電話するための口実を考えていました。すると、以心伝心、翔が我が家を訪ねてきたのです。

「お誕生日おめでとう!」
照れくさそうにプレゼントを手渡す彼。

「ありがとう・・・。」
(覚えてたんだ!今日が誕生日だってこと。)

あまりに突然で、まるで夢を見ているようでした。
プレゼントはペンダントでした。

それを高くかざし、その夜はキラキラした光をずっと眺めていました。
「神さまって本当いるんだなぁ」

ー高校3年生ーかけひき

その後も、友達関係は続き、変化が訪れたのは高校3年生の春です。
翔が意外なことを言うのです。

「空は俺とつきあいたい?」
「もし今、空がそう思うなら、俺は断ることはないと思う」

私の心臓は誰かに聞こえそうなほど、ドキドキしていました。
ずっと好きだったし、本当は、ずっと一緒にいたい。私だけを見て欲しい。抱きしめて欲しい。そう思っているのに、素直になれず、臆病な私はそれを言葉にできないのです。
「今のままでいいよ、ずっと友達でいいと思うよ」
結局そう答えてしまったのです。
「そうか・・・。」彼はそう言い笑っていました。

その帰り道、後悔ばかりが頭の中をぐるぐると回ります。
そして、本当の気持ちを伝えるために手紙を書いたのです。

“友達でいいと言ったけど、それは嘘。本当はずっと好きだった。だから、だから・・”

ー彼と彼女ー

翔にその手紙を渡そうとしたある日、
彼が女の子と歩いているのを見かけて、もう手遅れだと気づきます。

「彼女出来たんだね、おめでとう」
「でも、どうして、あの人が彼女なの?」
「空と、似てるから」
(私と似てるから?)

彼は彼女に告白され、迷っていたそうです。
今なら私に判断を委ねるなんて、ひどい男と思うでしょう。でもその時は、翔の迷いが私の迷いと全く同じだとハッキリと分かったのです。2人の心は繋がっていました。そう、2人はずっと友達、「友達は永遠」だから。

それでも、学校帰りに彼女と歩く姿を見るたびに、胸が締め付けられそうになり、なんでこうなるのかと自問自答するのでした。
あの頃の胸の張り裂けそうな思い、彼へのかけがえのない気持ち、廊下ですれ違うだけで、首のうしろがキュッとなる、あの感覚。すべてが思い出の中で優しく揺れています。


ー突然のさよならー

そして突然、終わりがやってきます。何もかもの終わりです。
彼と二度と会えなくなるなんて、思ってもみなかった。
「神様なんていない」
私はその時、そう思いました。
夏の朝早く、彼は事故に遭い、その数ヶ月後、二度と会えない人になってしまったのです。
薄れていく記憶の中で、彼は何を思ったでしょう。
私との日々を少しでも思い出してくれたのでしょうか。

あれから何度か彼の夢を見ました。何も話さない時もありますが、言葉を交わすこともあります。夢だとわかっている私は、現実に戻っていく感覚に、もう少し、もう少しだけと願っていました。

ー30年の月日ー

あれから30年の年月が流れました。

あの頃の精一杯の思い、切なさ、思い出、キラキラした毎日を
私は、またタイムカプセルの中にしまい。
部屋から見える夕陽を眺めながら「友達は永遠」と呟いていました。

h649著

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