<クラスメイトは有名モデル>
あれは高校入学直後の事だった。クラスメイトに有名グラビア雑誌のモデルがいたのだ。彼女はクラスの男子から人気があるのはもちろん、他の学年の生徒や他校からも彼女を一目見ようと学校へ詰めかける人もいるぐらいで、正にアイドルそのものだった。当然彼女を好きな生徒は数多くいて、男同士では誰が彼女に告白しようかなどと良く盛り上がっていたものだ。こんなに注目される女子は今まで僕の周りにはいなかった。だから僕も瞬く間に彼女に魅了されてしまった男子の内の一人だったが、告白どころか話しかける勇気もないヘタレで彼女が載っているグラビアを毎日眺めて妄想するぐらいしか出来なかった。

<学園祭の実行委員>
1年生の秋の事だった。学園祭にてクラスで行う劇の実行委員を抽選で2人決める事になったのだが、なんと僕と彼女が当たってしまったのだ。「こんな幸運があるのか。何はともあれ彼女と仲良くなるチャンスだ!!」僕はそう意気込んで早速ミーティングを行ったが、しかしいざ2人になると緊張して声が出て来ない。あれほど頭の中で繰り返した彼女との会話をしようにも最初の一声が掛けられないのだ。彼女も緊張した僕を察して最初はぎこちなかったが優しかった。「もうみんなして私たちに実行委員押しつけてさ~嫌になるよね。」と笑いながら話しかけてくれた。僕もそれでようやく緊張が解け、「ほんとだよな~まあ決まってしまったものは仕方ないから一緒に頑張ろうか。」と返すと、「うん頑張ろう。」と笑いながら返してくれた。ありきたりな会話だったが初めて彼女と出来た前向きな会話に僕は嬉しかった。その日以来、毎日彼女とミーティングを行いながら実行委員の仕事を一緒にこなすことが出来ていった。それは平凡ながらも憧れの彼女と過ごす事が出来て薔薇色の日々だった。

<思い知らされた現実>
学園祭の準備は着々と進んでおり、劇で使う小道具の買い出しに行く事になった。これは仕事の延長上だけど彼女と2人きりで外出出来るある意味デートだ!!僕は勝手に自分だけで盛り上がってしまった。そして買い出し当日、彼女はとてもおしゃれな恰好だった。モデルだから当然といえば当然だが、明らかに並んで歩いている僕の方が見劣りしているのが分かってしまい、気まずい気分になった。すれ違う人たちの視線からこう囁いている様に聞こえた。
「あの2人絶対釣り合ってないよね。」
「なんであんな可愛い子であの彼氏なの?」
楽しいはずの買い出しデートが半ば拷問の様に感じてしまい、僕の表情は暗く無口になってしまった。
そんな気分の悪そうな僕の様子を見て彼女は心配してくれた。
「大丈夫?なんか元気ないね。」
「うんごめん、初めて2人で外出るから緊張しているのかも。」
「私になんて気を使わなくても全然いいよ。同じクラスメイトなんだからさ、もっと気楽に行こうよ。」と言ってコーヒーを買ってくれた。
そんな優しい彼女に癒され、2人だけの時間は楽しむことが出来た。でも買い出しは終わって彼女と別れた帰り道にふと僕は考えた。僕はこれまで憧れで彼女と付き合いたいと思っていたけれど、いざ付き合えたとしても今日の周りの視線の様な不釣り合いの点で苦労するのだろう。彼女はとても優しいから最初はそんな事は気にしないかもしれないけど、付き合っていく内に周囲から影響を受けてだんだんわだかまりになっていくと思う。だとしたらいずれ関係も終わるだろうから最初から付き合わない方がいい。まあどうせ僕には無理だけど(笑)。僕は勝手にそう自己完結した。

<平凡な日常>
学園祭は無事成功に終わった。僕は仕事を全うできた事に安堵したが、これで彼女との接点が無くなってしまう事を考えると寂しくなった。けど彼女に対する思いは以前ほど強くはないから大丈夫・・・いや自分にそう言い聞かせていた。その方が自分が傷つかなくて済むのだから。それから彼女とはすれ違ったら話をするぐらいの間柄にはなったが、結局付き合うまでの間柄にはならなかった。恋愛話にもならないだろう。そして風のうわさで彼女にイケメンの彼氏が出来たとも聞いた。正直どこかもどかしい気持ちがある。心から付き合いたい人と付き合えなかったのだから。でも人生はそう上手くはいかないものだ。これからは彼女の事を陰ながら見守っていくのと同時に、自分にも相応しい相手が現れると信じて僕は精一杯頑張って行きたい。そう思って次の一歩を踏み出そうと思った。
t630著





























