友人の紹介や共通の趣味など、結婚のきっかけは十人十色です。
最近では婚活アプリを利用している方も多くいますよね。
様々なきっかけがありますが、私の親戚に「スイカ」で結婚を決めた方がいます。
ウソみたいな話ですよね。
私も最初は冗談だと思ったのですが、話を聞くと、納得のいく内容でした。
世にも珍しい「スイカ婚」のお話をご紹介いたします。

スイカ婚をしたのは「勝(まさる)さん」と「幸子(さちこ)さん」です。
勝さんは大工をするかたわら、本家である実家で両親と同居し、父の営む不動産業と農業を手伝っていました。
男3兄弟の長男なのですが、弟2人が結婚していくなか、ずっと独身。
「俺は結婚しないから」と言って、兄弟の結婚式にも出ていません。
仲が悪かったのではなく、新婦の家族や親戚に気を遣わせたくなかったのだとか。
自分のことは二の次で、家族や仲間が楽しそうにしているのを見るのが好きな方でした。
幸子さんは商業高校を卒業後、一般企業に就職。
社長は社員を家族のように思ってくれる人で、毎日楽しかったそうです。
お互い全く違う環境で育ち、全く違う環境で働いていました。

幸子さんの伯母は居酒屋を経営していました。
1人で切り盛りしていたので、幸子さんはたまに手伝うようになったんです。
その居酒屋の常連客に勝さんがおり、幸子さんに一目惚れしました。
勝さんはシャイな性格だったため、積極的に話しかけなかったのですが、一緒にいた仲間が動きだします。
「結婚はしないと言っていた勝が一目惚れした!一肌脱ぐしかない!」
家族思いで仲間思い、少し無理なお願いも快く引き受ける、他人の悪口を言わない、ギャンブルもしない、短所といえば自分のことは後回しにすること。
幸子さんは「本当にそんな人間がいるのだろうか…」と疑ったのですが、伯母も同意していました。
伯母の店にて客と店員として接するうちに、皆が話していたことが本当だったと実感しました。
勝さんは、皆が楽しそうに飲んでいるのを見ているのが好きだったので、自分から話を始めることは、ほぼありません。
しかし気がつけば話の中心にいて、周りから慕われているのがよく分かったそうです。

勝さんの実家は農業をやっていましたが、収入目的ではありません。
楽しみ半分でやっており、農協に卸しきれないほどの種類と量の作物を育てていたんです。
当然家族だけでは食べきれず、親戚やご近所さんにお裾分けをし、家に来たお客さんにも野菜を持たせていました。
頻繁に飲みに来ていた幸子さんの伯母も、ナスやきゅうり、大根、白菜など、旬の野菜をたくさん頂いたそうです。
そしてある日、大きなスイカ2玉を持ってきました。
伯母は「1玉で十分」と言ったのですが、勝さんは少し照れながら「幸子さんに」と。
確かに幸子さんは勝さんに、スイカが好きと言ったことがあります。
しかし何気ない会話の中で言っただけなので、覚えていたことに驚いたそうです。
そこからとくに会話が弾むこともなく、勝さんは仲間の話をニコニコ聞きながら飲み始めました。
この時に幸子さんは「この人となら結婚してもいいかもしれない」と思ったそうです。
何か見返りを求めるのではなく、自分の大切な人に喜んでもらうために尽くす人。
それで自分が損をするとは、全く思わない人。
そして「類は友を呼ぶ」という言葉通り、勝さんの周りには、彼を騙そうとする人は誰もいない。
皆が勝さんの幸せを願っているのが伝わったので、幸子さんも「この人を幸せにしてあげなきゃ」と思えたのです。
勝さんの人柄と、周りの仲間の協力もあり、2人は無事に結婚しました。

結婚後に幸子さんは会社を辞め、義父母と共に畑仕事に精を出す毎日。
農業は初めてでしたが、義父母がしっかり教えてくれました。
2人の子宝にも恵まれ順風満帆だと思われた日常は、ある日を境に一変します。
勝さんが49歳という若さで他界してしまったんです。
勝さんの葬儀には総勢600人もの方が手を合わせに来ました。
当時小学生の私は、初めて葬儀に参加したので「葬儀とはこういうものなんだ」と思っていましたが、後になって大人数だったんだと知りました。
本家の長男の葬儀だからでもありますが、勝さん自身の人柄による結果でもあります。
幸子さんは勝さんが亡くなった後も、義父母と共に生活し、2人の子供を立派に育てあげました。
私が大人になった時、「再婚は考えなかったの?」と聞いたことがあります。
すると幸子さんは、勝さんから生前、あるお願いをされたと言っていました。
「俺の面倒は見なくていいから、両親のことだけは頼む」
余命宣告をされていたわけでもないのに、それだけ頼まれたそうです。
「畑が忙しかったし、勝さんからもお願いされちゃったからね」
そう答えた幸子さんは、少し照れながら嬉しそうにニコニコしていました。

現在は幸子さんのご両親も義父母も亡くなっています。
しかし孫が産まれ、年に数回は娘さんと旅行へ行くなど、充実した日々を送っています。
たいへんな苦労もあったと思うのですが、私が会う時はいつもニコニコ楽しそうな幸子さん。
昔のように農業はしていません。
それでもお盆や命日には皆が好きだったものをお供えしたり、彼らとの思い出話を楽しそうに話してくれます。
きっと勝さんや両家のご両親も、ニコニコ嬉しそうに幸子さんを見守っているんだろうな、と思いました。
683著












