
「ひと夏の恋」の経験がある人はどれくらいいるでしょうか。
当時の私は、人を本気で好きになる、ということが分からず、
(相手が自分のことを好きと言ってくれるから)付き合ってみる。
程度の感情しかありませんでした。
テレビドラマでみるような、熱い恋心に動かされ、相手に夢中になる。
そんなのは夢物語で自分には起こりえない、とずっと思っていました。

そんな私が大学生のころ、初めて恋に落ちた時のお話です。
大学2年生の冬から新しく始めたアルバイトでその彼と出会いました。
そのアルバイトは、大学生が100人規模で採用されている曜日固定のアルバイトでした。
大学3年生の春、普段は出ない曜日に代理で出ることになり彼と初めて会いました。
1歳年上で高学歴、身長が高く、芸能人のような顔立ちの彼に一瞬で目を奪われました。
彼は学生アルバイトの中心的存在で、会ったことのない私を見つけると、
「○○の代理で入った人?」
と声をかけてくれました。
その後は、学生グループの輪の中に入れてくれ、私を色々な人に紹介してくれました。
見た目だけではなく、立ち振る舞いも爽やかで好感を持ち、
人生で初めて一目ぼれをしたんだと思います。
それから何度か出勤する曜日が被るようになり、仲良く話が出来るようになったころ、
アルバイト先の何人かで集まる飲み会に声をかけてもらえるようになりました。
その時も常に私の隣に座っていてくれて、初めて会ったアルバイトの人を紹介してくれたり、
さりげなく会話に入れてくれたりして、
アルバイト先の人たちともすっかり馴染めるようになりました。
飲み会に何度か参加すると、アルバイトのコミュニティ内の情報がだんだん入ってくるようになり、彼がアルバイトの女性陣たちから絶大な人気があることを知りました。
そして彼女たちから私は、「彼のお気に」と言われていることも。
嫌なことをされたりしたわけではなかったけれど、「彼のお気に」と言われているのは、
彼が「1人の女性」として私を見ているわけではなく、「妹」的にみてるということを、
さしていると知り、かなりショックを受けました。
それと同時に「彼のお気に」は、私だけではないということも仲良くなった女の子から
教えてもらい、私は特別扱いしてもらっていたわけではないんだな、と気づきました。
今まで、「好き」という感情が分からず、男の子を傷つけてきた私が、
彼を「好き」になっているということに気づいたとき、
ああ、今までなんてひどい対応をしてきたのだろう。と思いましたし、
「好き」ってこんな感情になるんだと知ることが出来ました。
それからは、「好き」という感情を教えてもらえただけ、
「彼のお気に」として仲良く出来ているだけでいい、と思うようにしました。
そんな彼との関係に変化があったのは、大学3年生の初夏のころでした。
アルバイト終わりにたまたま会い、一緒に帰っていると、
「もうすぐ夏休みだし、テスト終わったら2人でどこか遊びに行く?」
と誘ってきたのです。
私の頭の中はパニックで、「彼のお気に」としてそばにいたい私と、
「彼のお気に」ではなく「彼女」になれることを期待している私がいました。
もちろん遊びに行くお誘いはお受けし、とうとうデートの日がやってきました。

デートの目的地は、お台場。
THEデートスポットです。
普段はラフな格好をしていることが多い私ですが、
せっかくのデートなので張り切ってワンピースとお気に入りのサンダルを着ていきました。
彼はそんな私をみて、
「いつもと違う雰囲気でかわいいね。」
と褒めてくれました。
お台場ではおしゃれなお店でランチをしたり、
東京ジョイポリスで遊んだり、あっという間に1日が過ぎてしまいました。
「帰る前に観覧車に乗ろう。」
と誘ってくれた彼。
これはもしや、、、と淡い期待を胸に観覧車に乗り込みました。
「話しておきたいことがある。」
その言葉から始まり、
今日のお出かけはとても楽しかったこと、そのお礼があり、最後に一言。
「○○(私)のこと、ずっと気になってて好きだけど、付き合うつもりはない。」
何を言われているのか全く分からなくなりました。
観覧車が動く音や、音楽が流れていたはずなのに、それも聞こえなくなりました。
今日のデートは、楽しかった。⇒ うん、私も楽しかった。
好きだけど付き合わない。 ⇒ ん??好きだけど?付き合わない??

大混乱に陥りました。
後編では彼がそう話す理由とその後についてつづりたいと思います。
後編

「○○(私)のこと、ずっと気になってて好きだけど、付き合うつもりはない。」
そういった彼は、このように付き合えない理由を話してくれました。
①地元で就職することが決まり、社会人になってから会いにくくなる。
(彼の実家は九州で、空港からも遠いところにあります。)
②遠距離恋愛で寂しい思いをさせたくない。自分も相手も不向きだと思う。
正直②を聞いたとき、あ、この人、そんなに私のこと好きではないんだな。と思いました。
好きで離したくないのであれば、どうにかしてつなぎとめるように努力するはず。
その選択肢が彼の中でない時点で、付き合っても長く続かないな、と感じました。
そして彼は、こう続けます。
「○○(私)が就職で、こっちにきてくれるなら責任取って結婚前提で付き合うよ。」と。
一気に百年の恋も冷めた気持ちでした。
20代前半で、まだ大学生。これから夢と希望がたくさんある私に、「責任取る」?
相手に責任を押し付けるほど、落ちぶれているわけでも、執着しているわけでもありません。
そんな言葉一つで、私が喜ぶと思ったのか。
ばかにするのもいい加減にしてほしい。と思いました。
彼には、そこまでの怒りはぶつけませんでした。
ただ一言、何年たってもきっと、あなたと付き合うことはないです。
と言って帰りました。

それからというもの、アルバイト先で会っても適度な距離を保ち、
決して必要以上に近づかないようにし、
内輪での飲み会も仲良くなった子たちと過ごすようにして半年が経ちました。
彼を含む、大学4年生の送別会の日のことです。
その日、後輩の私たちは、お花や色紙を用意して先輩たちを送り出しました。
飲み会が盛り上がってきたころ、彼に少し2人で話したい。と誘われます。
一度は好きになった人だし、きっともう会うこともない、
会うのは今日が最後になるだろう。と思い、誘いに応じました。
少しみんなの輪から離れたところでぽつぽつと彼が話始めました。
「あの日なんで○○(私)が怒ったのか、すぐにはわからなかった。
自分としては中途半端なことはしたくなかったし、正直な気持ちを伝えたつもり。
だけど、後から嫌な言い方をしたな、と思ってそれを謝りたくて。
ないものねだりなのはわかってるけど、あの時、付き合ってたら、
遠距離でも一緒にいられたかもしれない、って今も後悔してる。」
2人で出かけたあの日、付き合ってと言われていたら絶対に二つ返事で応じていたのに、
いま言われても全く響かないんだなぁ。と感じました。
彼の真意はわかりません。地元に戻るという選択をしたことをもしかしたら後悔していて、
少しでもこっちの繋がりを切りたくなっただけかもしれない。
だけど、当時待ち焦がれた言葉は、
いま薄っぺらく聞こえて自分の中では全く意味をなさない言葉になりました。
この気持ちのすれ違いも運命なんだろうな、と思い、お断りをし、
全く怒ってないこと、社会人になっても応援していることを伝えました。
結果として、当時の私にとってこの時間は救いの時間になりました。
初めて人を好きになって、その人への感情が「怒り」で終わるのは虚しかったから。
どこかで彼が弁解してくれることを望んでいたのかもしれないです。

3年後。
久しぶりにアルバイト先での同窓会がありました。
参加者は数人でしたが、幹事の人から声をかけてもらい、私も参加しました。
社会人になってからは近隣で働いている人たちとはたまに会っていましたが、
今回は、ほぼ遠方組、彼も参加予定でした。
久しぶりに会った彼は、少し九州なまりが強くなっていたものの、
あの頃のまま、素敵な彼でした。
まだ独身で、お相手もいないとのこと。
私はすでに婚約していたので、「おめでとう。」と言ってもらいました。
この同窓会をきっかけにたまに何人かで連絡を取るようになり、
彼がこちらに出てきた時は、みんなで会うようになりました。
そこでは、彼の恋愛相談に乗ったり、私の結婚生活について話したり、
と1人の友人として楽しく過ごしています。

彼がお酒が入るとよく言う言葉があります。
「俺たち、恋愛としてはうまくいかなかったけど、
友達として最高にいい関係を気づけていると思うけど、どう?」
と。一時期相手に恋愛感情があって、それをぶつけ、ぶつけられた間柄だからこそ、
相手のことが理解できてアドバイスもできる。
そして相手も自分も今は全く恋愛感情を抱いていない、
その関係がとても居心地が良いと感じました。
男女の良好な関係は恋愛だけではなく、
友情でも育むことが出来ると知れて嬉しく思います。
改めて彼に出会えたことは、幸せなことだと感じました。
a669著





























