合コンの誘い

大学4年生の10月。仲間が就職活動に奔走するのを横目に僕は半年後からのメキシコ生活に備えて資金集めのバイトに明け暮れる日々。
そんなある日教室で次の授業の準備をしていると、すでに企業からの内定をもらっているシンヤが僕に話しかけてきた。
「よお!来週の金曜空いてる?お前どうせヒマだろ?」
「どうせヒマだろ」には少しカチンときたが、まぁ事を荒立てる必要もない。
「ん~、バイト入ってるけど何かあんの?」
バイトのシフトなんて変えようと思えばどうにでもなる。
しかし僕は「うん」とは言わず、友情とバイトを天秤にかけるべく探りを入れた。
「友達の女の子と合コンやるんだけど来ない?」
僕の心の天秤の針は、振り切らんばかりに友情へと勢い良く傾いた。
僕はそんな心の中とは裏腹に「俺忙しいけど、まあ何とかスケジュール調整するわ」的な雰囲気を醸し出しながら、合コン参加の約束をした。
服はどれにしようか?靴は?髪は3日前ぐらいに切りに行こうか。。。
久しぶりの合コン、テンションは上がっていた。
相手は保育士の女の子4人組。
無邪気な子供たちを母性で包むそのやさしさ。。。
否が応でも期待は高まっていった。
再び会う約束

合コン当日。僕はシンヤ、タカアキ、ヒロの3人と一緒に意気揚々と電車に乗り込む。
渋谷に着いて改札を出るとき、女の子たちから待ち合わせ場所のダイニングバーにすでに到着しているという電話があり、僕たちは人混みをかわしながら駆け足で改札を抜け、待ち合わせ場所へと向かった。
相手は1こ上の保育士の4人組。
僕のイメージ通りみんなしっかりしてそうで、それでいてオシャレにも気を使っている。
僕らは最初の乾杯をすると早速自己紹介へと移っていった。
合コンはとても盛り上がり場所を移しての二次会、カラオケの三次会と終電ギリギリまで楽しんだ。
僕はボブヘアーがよく似合い、背は小さいけど気が強く姉御肌のマミちゃんと仲良くなり、携帯の番号を交換した。
そしてその後、何度か連絡を取り合い二人で会う約束をした。
僕の下心

場所は横浜。
半年後にメキシコに行くのを決めている僕にとって女の子とのデートは日本で最後になるかもしれない。そして、メキシコに住もうと思っている僕は彼女が欲しいとも思っていなかった。
正直に言おう
僕はただマミちゃんとエッチがしたいだけだったのだ。。。
そんな僕の下心を知ってか知らずか、マミちゃんはお酒を楽しんでいる。
小心者の僕はというと、お酒の力を借りてそういう雰囲気にもっていこうと最初からペースを上げて飲んでいた。
彼女はそんな僕に「大丈夫?顔赤いよ」と言って右手で軽く僕の頬に触れた。
それからは夢のような時間だった。
あっという間に終電の時間が迫り、チラチラ腕時計に目をやる彼女。
「俺今日帰らないから。ずっとマミちゃんと一緒にいるよ。」
酔いに任せて僕は言った。
彼女は声を上げて笑うだけで、はいともいいえとも言わなかった。
僕らがお酒を飲んでいる間雨が降っていたようで、アスファルトは濡れ小雨がぱらついていた。
雨に濡れた冷たい秋風が僕らの頬をなでる。
僕が半ば強引に彼女の手を取ると彼女も僕の手を握り返してきた。
それは僕にとって明確な彼女からの答えだった。
ふたりは傘もささず、駅とは逆の方向へと歩き出した。
カサナラナイココロ

薄暗いベットの上、僕はつぶやくように彼女に言った。
「俺、来年の春メキシコ行くんだ」
それは僕から彼女に対して、この関係には続きがないということを告げるものだった。
「へぇ、いいね。メキシコってどんなところ?外国に行くなんて羨ましいなぁ。」
彼女はそう答えた。
「それだけ?」僕は心の中で呟いた。
僕の中には彼女の僕に対する気持ちを確かめたい、いや、好きでいてほしい。そんな浅はかな想いがあった。
彼女はそんな僕の心を見透かしているかのように当たり障りのない答えを用意した。
いつの間にか彼女の心を求めている自分がいる。
僕の心のパズルの欠けているワンピースを彼女の中に探している自分。
もどかしい思いが僕の心を包み込む。
やり場のない感情。
僕は再び彼女の体を求めた。
初めての朝、そして終わりの朝

朝が来た。二人にとって初めての朝、そして終わりの朝。
僕は気だるさの残る体を刺す朝の光をにらみつけると、彼女の手を取り駅へと向かって歩き出した。
重い足取り、途切れ途切れの会話。
昨日までのふたりはもうそこにはいなかった。
僕はもう握り返されることのない彼女の左手にそっと力を込めてみた。
握り返されることはないと知りながら、今更口に出すこともできない想いを込めて。
改札口で僕は彼女を見送った。
「メキシコ頑張ってね!」
彼女は笑顔でそう言ってくれた。
「ありがとう、マミちゃんも体に気を付けて」
僕がそう答えると、彼女はバイバイと小さく手を振って歩き出した。
きっと彼女はもう振り返らないだろう。そんな思いとは裏腹にその場に立ち尽くし、その姿が見えなくなるまで彼女を見つめている僕がいた。
「あっ、やべえバイト遅刻だ。。。」
そうつぶやき足早に駅のホームへと駆けていく僕の背中を、秋の穏やかな朝の光が包み込む。
hakosue著






















