恐るべき合コン
「おい田中(仮名)!今日暇だろ、合コン行かいねえか!」
学生時代のことだ、当時運動系のサークルに入っていた俺にとってこの先輩たちからの誘いはまさに恐怖の象徴だった。
仲の良い友人たちからの合コンなら進んでついていくだろう。場を盛り上げてふざけあって、女の子と笑いあって楽しい出会いを満喫できるだろう。
だが先輩たちが誘ってくる合コンとは立場の弱い俺にとってしてみればまさに生き地獄。
無理やり酒を飲まされることはザラで、女の子の前でワザとつまらない芸を披露して先輩から殴られる役割をやらされたり、いかにもコイツは使えないやつなんですと言われたりとさんざんな目に合うからだ。
金銭的にもマイナスだったのが一番最悪だが。
だから先輩たちの合コンへは行きたくなかったのだが、結局俺は後輩で先輩たちのイエスマン。断れるはずもなかった。

恐怖の合コンのハジマリ
彼女と出会ったのは先輩たちが近所の女子大のテニスサークルとの合コンの人数合わせに連れて行かされた時のことだ。
大学近くのチェーンの居酒屋で行われた合コンは俺以外に先輩四人の計五人、女子側は計四人とかなりの人数で行われた。女子側の人数が一人少ないがあとで来るそうなので人数が少ないままで恐怖の合コンは開始された。
そんな大人数で行われた合コンはアルコールと両者体育会系特有のエネルギーが合わさり、すさまじいほどの超ハイテンションで進行していった。
今までにない全力全開のテンションで俺はそのノリについていけなかった、もう本当に疲れた。
けどこの合コンが彼女との出会いのきっかけになるのだから人生何が起こるかわからない。

彼女も俺と同じ境遇だ
遅れて合コンにやってきたのは大人しい感じの女の子であった。名前は佐藤(仮名)さん、女性側のなかでも一番年下の後輩らしく申し訳なさそうに頭を下げていたのが印象的だった。
佐藤さんが頭を上げたとき、ふっと俺と目が合った。別にその瞬間に恋したわけじゃない、ないのだがなぜが妙な感情を抱いた。
安心感なのか面倒くささなのか疲れなのか、どうにも奇妙な感情だった。
後で佐藤さんにこのときのことを尋ねる機会があったので聞いてみたら佐藤さんはこんなことを思っていたらしい。
『この人もワタシと同じ境遇なんだなって同情しちゃった』
それを聞いたとき思わず吹き出してしまった、俺も同じだよって。

フォロー合戦の果てに
そんな彼女を入れて再スタートした合コンは俺も彼女も先輩のフォローに勤しみながら進行していった。
話しには合いの手を入れ、おつまみやお酒が無かったら注文を確認してと大忙しだ。
ただ、今回だけは苦ではなかった。なぜだかはよく分からないのだが、知らないうちに佐藤さんと俺ともあいだで阿吽の呼吸でフォロー合戦が開始されたからだ。
言葉は必要なかった、アイコンタクトだけで相手との意思表示が出来てしまったのだからだ。それも今日初めて会った相手とだ。
結局居酒屋の閉店時間まで合コンは行われ、二次会もなく終えたことに俺と佐藤さんは大きなため息を吐いてしまった。それも二人同時にだ。
それが可笑しくて二人して笑ってしまい、ボクは佐藤さんにこう切り出した。
「連絡先を教えてもらえませんか?」
佐藤さんは笑いながら教えてくれた。

その後の俺と彼女
その後佐藤さんとの付き合いは社会人になっても続き、さすがにまだ結婚しようとは言えないがいつかはそれを言えるようになりたいとは思っている。
まだ少ない人生しか歩んでいない俺が言うのアレだが、恋のハジマリとは人間の想定外のところから来るんだろう。
まさかあんなに大嫌いだった合コンであなたのカノジョができますよ、だなんて昔の俺が言われたら絶対に信じない。
それだけは確かだった。
h515著





















