職場での出会い

上司からまさかの…?そんなつもりはないんです

出会い

新卒で入社してすぐに配属された課で私の教育担当になった長谷川さんは

お世辞にもイケメンとはいいがたく、私より背が低かった。

しかも第一印象は「生真面目」「厳しい」「口うるさい」ととても悪かったのだが、

それが「世話好き」「優しい」「おもしろい」に変わるのはすぐだった。

職場での日常


私はかなり非常識で生意気だったのだが、長谷川さんはそんな私に仕事だけではなく

社会人としての常識やマナー、考え方を丁寧に根気強く指導してくれた。

また、仕事終わりに他の若手も引き連れてよくごはんに連れて行ってくれるほど

仲間を大切にする人だった。

変化


入社して3年後、課のメンバーは異動や退職で入社当初よりかなり様変わりしてしまった。

3年前と同じ顔ぶれなのは私と長谷川さんだけだったのだ。

長谷川さんは相変わらず私に目をかけてくれ、

この頃にはプライベートでも同じクラブ活動に参加するくらいの仲になっていた。

しかし、周囲の変化にあわせて長谷川さんの言動も少しずつ変わってきていることに

私は気付いていた。

というのも、私の恋愛事情に対して

「そんなやつと付き合うならこれから口をきかない!」

「恋愛より仕事をしなさい。」

と、度を超えた干渉をしてきたり、

私が仕事中にほかの男の人と話していると

あからさまに不機嫌な態度をとるようになった。

急性アルコール中毒


長谷川さんとの微妙な関係性や仕事、恋愛のことなどいろいろな悩みを抱えていた私は、

友人との飲み会で羽目を外しすぎ、急性アルコール中毒になってしまった。

救急車で運ばれ、翌日は会社を休むことになった。

上司である長谷川さんに連絡を入れたのだが、

そのときの長谷川さんの態度はとてもそっけなかった。

私の症状は思ったより重傷で、1日、2日で治るレベルではなかった。

通院しながら騙し騙し仕事には行っていたものの、かなりフラフラな状態だった。

そんな私を見かねたのか、仕事終わりに長谷川さんから呼び出しがかかった。

突然の告白


ドライブに連れ出された私は、正直気分が悪くて吐きそうだった。

急性アルコール中毒がまだ尾を引いており、車の芳香剤が鼻について

卒倒しそうなレベルだったのだ。

そんな微妙な空気の中、長谷川さんが口を開いた。

「俺のせいでそんなことになったのか?」

一瞬何を言っているのか分からなかったが、

吐きそうになるのをこらえながら一生懸命に思考を巡らせ、

「あ、もしかして自分のせいで私がヤケ酒をあおったと思っているのか」

という考えに至った。

確かにそれも少し関係してはいるが、別にそれだけが原因ではないし、

正直言って長谷川さんの自意識過剰さに鬱陶しさを覚えた。

「違いますよ。本当にただの自己管理不足です。社会人として失格ですよね。」

と無理矢理笑顔を作り出した私だったが、次の長谷川さんの言動のせいで

一瞬にして表情が凍り付いてしまった。

「好きなのかもしれない。」

そう私に告げた長谷川さんは、密室の車内で私の手をぎゅっと握ってきたのだ。

吐き気がピークに達していた私は、思考停止状態でうつむいた。

言い忘れていたが、長谷川さんは既婚者である。

気まずい空気


恐怖のドライブから一夜明けた翌日、職場で顔を合わせた私たちは

とてつもない気まずさを抱えていた。

あの夜はというと、「何言ってるんですかー!冗談が過ぎますよ!」

と私が適当にあしらって足早に解散したのだった。

長谷川さんは別に告白の返事を求めてくるわけでもなく、

単に口から言葉がすべり出てしまったという表現が正しいだろうか。

既婚者と2人きりでドライブに行く行為自体が

おかしなことだったと猛省したのは言うまでもない。

とはいえ長谷川さんとは入社当初からの付き合いであり、

恋愛感情など微塵もない「大切な仲間」として共に過ごしてきたので、

こんな関係になるなんて想像もしていなかったのだ。

あっけない別れ


あれから長谷川さんとはしばらくギクシャクしながら仕事をしたのだが、

あっけなく終わりがきた。

私の部署異動が決まったのだ。

私にとってはとても都合のよいタイミングだった。

長谷川さんとは微妙な雰囲気のままお別れすることになったのだが、

物理的な距離ができたことでどこか安心した自分がいた。

あれ以来長谷川さんも何かしてくることはなくなったし、

あのときの言動は一瞬の気の迷いだったのだと思いたい。

今や私は結婚し、長谷川さんも家庭生活を続けているようなのでホッとしているが、

一歩間違えていれば1つの家庭を壊していたかもしれないと考えるとゾっとする。

 

 

k84著

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