この人と出会わなければ今の自分はいなかっただろう、そんな風に思える大切な出会いはありますか?
今回はバイト先で出会った、歳上の先輩とのお話です。
出会い

私は恋愛や人間関係に対して、あまり積極的になれる方ではなく、どちらかというと一歩引いて見ている様なタイプでした。
そんな私は、新しい飲食店のバイト先でも、なかなか積極的にコミュニケーションをとれずにいました。
そんな奥手な私にも、入りたてからずっと優しく話しかけてくれていた3個上の先輩がいました。
その先輩(以下、A先輩とします)は誰にでも優しく、仕事もできるのでみんなの中心にいる様な人でした。
一方私は、初めてのアルバイトという事もあり、色々なミスをしてしまったり、慣れるまでなかなか厳しい日々が続きました。
人よりも落ち込みがちな私は、アルバイトの日々にすっかり疲弊してしまい、自分には向いていないのではないかと、辞めて全く違う業種のアルバイトを探そうか、とまで考えていました。
まだ日も浅く、この様な悩みを打ち明けられる人もバイト先にはいなかったので、どうしたらいいか悩みました。
そんな気持ちのまま仕事をしていると、A先輩がやってきて私の隣に立ちました。
すると先輩は、私が何も言ってないのにも関わらず
「大丈夫?」
と声をかけてくれました。
もしかしたら疲れが顔に出てしまっていたのかもしれませんが、誰にも話せていなかったこの気持ちに気付いてくれた気がして、少し泣きそうになりました。
「大丈夫です。」と言って、その後は普通に話しをしながら2人で閉店の片付けをました。
その後も、何かと声をかけてくれる様になったA先輩。
私は先輩のお陰で、以前抱いていた”辞めたい”という気持ちは段々消えていき、周りの人達とも少しずつ打ち解けていきました。
その時私には、A先輩が1番話せる先輩でした。この職場は従業員が多く、店内も広かったので場所によって担当が毎日変わるというワークスタイルで、A先輩と同じシフトで同じ場所の割り当ての日は、あんなに嫌だったバイトが楽しみになっている自分がいました。
恋だと気づいた瞬間

異性との関わりも、歳上の人との関わりもあまり経験がなかったので、初めはA先輩をお兄ちゃんの様に慕っている気持ちでした。
ですがある日、この気持ちが恋だと気づく出来事があったのです。
その日はお客さんも少なくゆったりとしていたので、私は店内の掃除や備品の補充をしていました。
すると、その日同じシフトだったA先輩と、私の事を可愛がってくれていた女性の先輩が一緒にこちらにやってきました。
その日私はいつもとは違う髪型に髪を束ねていました。
するとその女性の先輩はA先輩に
「○○ちゃん、かわいいねー!○○(A先輩の本名)もかわいいと思うでしょ?」
と聞いたのです。
するとA先輩は
「うん、かわいい!」
と言ったのです。
私は多分その時、顔から火が出そうな程赤くなっていたと思います。
ただ単に、いつもと違う髪型を褒められたんだ…と思おうとしましたが、どうしても“かわいい”と言ってくれたあのフレーズが忘れられずにいました。
この時私は、自分がA先輩にかわいいと思われたかったんだと気づきました。
そしてこれは恋なんだと、確信したのです。
彼女になりたい

ある日バイト仲間数人で集まって遊ぶ事になり、待ち合わせ場所に向かいました。
公園で待ち合わせていたのですが、まだ他の人は来ていません。私が一番乗りでした。
座って待っていようと思ったところ、次に現れたのはなんとA先輩でした。
そのまま私達は、公園のベンチに座って他の人が来るまで話をしていました。
1番初めに来てよかった、と心から思いました。
他の人が来るまで、結構な時間2人で話していて、途切れることのない会話と、優しいA先輩の話し方が心地よくて、ずっとこの空間に入れたら良いのに。と思ってしまいました。
ふと、彼女になれたらなぁ…と口走ってしまいそうな自分がいて、この頃から私は、A先輩に自分の気持ちを伝える事を意識し始めました。
疑惑…
先輩への気持ちに気づいて少し経った頃、ある疑惑が自分の中に生まれてきました。
それは、私と同期の仲良くしていた女の子(以下、Bちゃんとします)に対するA先輩の接し方がきっかけでした。
私や他の誰かと接する時とは違う、2人の特別な空気感を感じてしまったのです。
その時私は、A先輩はBちゃんが好きなのではないかという疑惑を持ち始めました。
しかし、私のA先輩に対する思いは誰にも話していなかったので、誰かに聞くことも相談する事もできませんでした。
疑惑が確信へ

ある日、バイト仲間で夜に飲み会をする事になりました。
待ち合わせ場所まで一緒に行こうとBちゃんに誘われたので、私達は駅で待ち合わせ、みんなとの合流場所まで歩いていました。
いつも通り話しながら歩いていると、Bちゃんは報告があると言ってきました。
「A先輩と、付き合う事になったんだよね。」
なんとなく、報告という時点で少し覚悟はしていました。
しかし実際に聞くと、予想以上にショックが大きかったのです。
でもBちゃんは私の気持ちを知らないので、何を言う事も泣く事もできませんでした。なんとか笑顔を作り、おめでとうと言いました。
自分の気持ちを悟られない様必死にBちゃんに、どこで告白されたのかなどの聞きたくもない質問をしました。
そして飲み会に参加しました。そこにはA先輩ももちろんいて、飲み会自体は楽しかったのですが、2人の姿を見ると涙が出そうになり必死に堪え、堪えきれない時はトイレに行きました。
恋の終わり

その後もバイト先でA先輩はいつも通り変わらず優しくしてくれましたが、私にはその優しさが辛かったです。
Bちゃんの事も友達として好きだったので、私達の仲は変わる事はありませんでしたが、しばらくはA先輩とBちゃんが一緒にいるところを見るとその場から離れたり、見ない様にしていました。
初めこそ受け入れられず、苦しい日々でしたがそこからはなんとか自分の中でも踏ん切りを付け、他の出会いもあったりして、自然とA先輩への恋心は消えていきました。
その後の私たち

その時のバイト仲間とは、10年程経った今でも時々会ったりお互いの結婚式に参列したりするくらい、私の人生の中で大切な友人になりました。
そしてそのバイト先で出会った人と、長いお付き合いを経て私は結婚しました。
もしあの時早々にバイトを辞めていたら、こんなに素敵な友人達や今の旦那さんとも出会えていませんでした。
なので私は、気持ちがどん底に落ちていた時にA先輩が声をかけてくれた事を、今でも感謝しています。
私たち夫婦共通の先輩である事もそうですが、私個人的にはこの様な気持ちもあり、A先輩を自分達の結婚式に招待しました。
最後のお見送りの時、A先輩はあの時と変わらない優しい笑顔で
「本当におめでとう!」
と言ってくれました。
私はその笑顔に懐かしさを感じながら
「ありがとうございます!」
と、先輩に負けないくらいの笑顔で答えました。
N487著




























