学校での出合い

カミングアウトは突然に 

前編
これは私(リュウタ)が、大学院生のときの話。

大学生のときには驚くほど女の子の接点がなかった私。

というより、恋愛は自分のことを評価されるものだと思っていた。

だから女の子と関わるのが怖いと思っていたのかもしれない。

女の子の気持ちよりも自分の気持ちを優先していたのなら、彼女ができるわけもない。

とはいえ、彼女ができたら水族館にデートに行きたいとか、映画を見に行きたいとかそういった願望は一般男性くらいにあった。

ネットで「彼女の作り方」とか必死に調べる前に、目の前の女の子と楽しくおしゃべりするところから目標にすればよかったなと今なら思うわけなのですが。

とにかく、理由をつけて彼女を作らなくてもいいように逃げていたのがこの私。

今回はある女の子、恵美ちゃんの恋心を知らずに過ごしていた私が体験したこと。

恵美ちゃんの気持ちを打ち明けられたときのお話です。

恵美ちゃんとのいきさつ

「元気?今何してる?」

中学生のクラスメイトだった恵美ちゃんから夜中に突然ラインが入った。

恵美ちゃんは私が中学3年生のときに同じクラスだった女の子。

クラスでは一緒の班になって、おしゃべりをしたこともある。

恵美ちゃんは可愛いというよりも美人系。

容姿は整っていて、ここだけの話私の男友達も恵美ちゃんと付き合いたいと相談を受けていたくらいの美人。

ただ、私は当時、彼女がいてぞっこんでしたし、ただのクラスメイトというくらいの認識でいました。

恵美ちゃんはとても大人しい子で男の子と話をしているところをあまり見たことがない。

ただ、なぜか話しかけると私のことはいじってくるので、面白い子だなとは思っていた。

今思えば興味はあったのだろうか。

ふと笑ってしまう自分がいる。

修学旅行でもたしか同じ班になったこともある。

途中バスの中で爆睡してしまった私の隣に恵美ちゃんは座っていたけれど、目的地に到着しても起こしてくれなかったことがあって。

実は今でも少し根にもっている(笑)。

というのは冗談。

でもクラスメイトが全員降りているのに、寝顔に爆笑してずっと見ていたというちょっと変わった恵美ちゃん。

「ヨダレがたれてたよ。」

そう言いながら笑っている女の子。

それが当時の私の恵美ちゃんのイメージ。

さて、そんな恵美ちゃんとは中学校を卒業してからほとんど接点がなかったのです。

なぜ、元気?と一言だけのラインが届いたのか疑問に思ったのが始まり。

 

ラインが止まらない

急にきたラインにとまどいを覚えながらも「元気だよ。そっちは?」となんとか返事。

もう少し気の利いたラインは送れなかったのか。

今ではそう思うけれど、さすが不器用な私。

そっけない返事にも関わらず、数分単位で返信が返ってきます。

「今仕事は何しているのか。どこに遊びに行っているのか」

私の近況を聞いてどうするのだろうかと思いながらも、あることを私は思い出した。

恵美ちゃんは自分のことを話すのがとても苦手。

困っていることを相談するときには必ず相手の状況を確認するところから始めるくせがあるのを。

「何かあったんじゃないか?困っていることがあるような気がするんだけど」

そう、気づいたら確認をしていた。

「ばれちゃったか。なんで分かったの。でもなんか安心した」

ふつうは動揺すると思うのですが、何かあったということは分かりました。

恵美ちゃんは何か私に相談したかったようです。

はて、安心するとはどういうことなのか。

そのときの私は知る由もなかった。

 

新たな命に対する葛藤

結論からいうと恵美ちゃんのお腹には新しい命が宿っていました。

だけど、妊娠が分かったとたんに、父親になる男の子が急にいなくなってしまい、恵美ちゃんは一人になってしまったというのです。

とてもひどい話です。

男性側が責任をとらずに逃げてしまったのですから。

私は大切な友人のこころを傷つけられたことへの怒りが止まらなかった。

恵美ちゃんも一人で子どもを育てていけるのか不安だったようです。

それはそうですよね。

本来であれば信頼できるパートナーと助け合って子育てができるはずで、恵美ちゃんも相手の男性を信頼していたのでしょうから。

恵美ちゃんは両親にすぐに相談したそうです。

恵美ちゃんの両親は「できることはサポートするから自分で決めなさい」と優しく言ってくれたと話していました。

でも、不安はなくなってくれなくてどうしたらいいのか分からない。

「だからこころが苦しいの」とそう言っていました。

自分に一体何ができるというのだろう。

私も恵美ちゃんの葛藤を一緒に背負っていたのかなと今では思う。

私にとって恵美ちゃんは大切な友人だったから。

後編
恵美ちゃんのこころの葛藤を聞いた私はどんな言葉をかけてあげたらよいのか分からなくなりました。

だけど、私にできることは恵美ちゃんの話を逃げずに聞いてあげることだとそう思っていたのです。

恵美ちゃんとリョウタ君の物語はどのような展開を見せるのであろうか。

 

カミングアウトは突然に

恵美ちゃんの話を聞いていた私は「なぜこんな話を私にしてきたのだろう」と純粋に思っていました。

しかし、恵美ちゃんの話を聞く中でその疑問の答えが見えてくることになる。

数日間、ラインをしていて少しだけ会って話ができないかと恵美ちゃんに呼び出された。

やりとりの中で知ったのですが、恵美ちゃんの家と私が当時住んでいた家がとても近かったようです。

近くの喫茶店に集合し約10年ぶりに顔を合わせた私たちは、しばらくたわいもない話を楽しみました。

久しぶりに中学3年生のときに戻ったような感覚。

とても懐かしい気持ちになっていました。

そんな折、恵美ちゃんが意を決したようにつぶやく。

「急にラインしてごめんね」

これまで会話を楽しんでいた恵美ちゃんの表情が少しくもる。

どうしたのか尋ねると、ゆっくり話始めます。

「困ったなって思ったときにね」

「ふとね、リュウタ君のことが頭に浮かんだの」

「実は中学のときにね。私リュウタ君のこと気になってたの。好きになってたんだと思う。ううん、ちゃんと好きだった」

いきなりのカミングアウトに衝撃を受けました。

全くそんな素振りを見せることなんてなかったから。

「私、人と話すの苦手だったでしょ。というか男の子と話すことが苦手だった。」

「だから、男の子と距離をとっていたんだけど。リュウタ君と話すときだけはなんだか安心できたの。」

安心できた理由はよくわからないけど、と苦笑いしていた。

「でもね、知ってると思うけど、リュウタ君がつきあってた彼女と私は友達だった。だからね、気持ちを打ち明けることはできなかったんだ」

ふいに恵美ちゃんは涙をこぼす。

「少しでもそばにいたいから、だから私は好きって気持ちをしまっておこうと思ったの」

そう涙ながらに話す恵美ちゃん。

私はその気持ちを受け取りながらも、気になっていたことを聞いてみた。

「どうして今そのことを話してくれたの?」

とても緊張していたと思う。

私自身その気持ちにどう向き合うべきか分からなかったから。

 

彼女の決心と最後の言葉

しばし、沈黙が流れた。

一生懸命自分の気持ちを言葉にするため考えているようだった。

たった数分間、だけど永遠にも感じられるような時間。

呼吸も追いつかない感覚。

動悸がしだいに強くなっていくのがわかる。

「私が前に進んでいくために、区切りをつけたかったの」

そう、恵美ちゃんは言葉を紡いだ。

卒業してから、恵美ちゃんは何人かの男性とお付き合いをしていたらしい。

だけど、相手に合わせるばかりで本当の自分を出せなかったそう。

そんな恵美ちゃんも好きになった相手がいて。

将来を真剣に考えたんだ。

でも結果、相手の裏切りにこころを痛めた。

「だけど、時間は巻き戻せない」

「新しい命と残りの人生を歩んでいこうと思ったけれど、ふいにリョウタ君のことが頭に浮かんで心残りは残したくなかった」

だから、前に進んでいくために話をしたかったと。

涙ながらにかたる恵美ちゃんに息をのんだ。

しばしの沈黙のあと、恵美ちゃんはこう続ける。

「私はシングルマザーになるけど、リョウタ君はきっと優しいから今の話を聞いたら好きじゃなくても私を助けるために、一緒になろうとするかもしれない」

「でも、それは私望んでないと思う。私は今もリョウタ君のこと好きなのかもしれない。だけど、私の気持ちをリョウタ君の人生をかけて背負う必要はないの。」

「だからお願い。絶対にリョウタ君は幸せになってね」

そういった恵美ちゃんはお礼を言って、「私も新しく産まれてくる赤ちゃんを幸せにしてみせるから。」と最高の笑顔を向けてきたのでした。

喫茶店を出て、凛と歩くその姿はとてもまぶしかった。

 

人生って何が起こるか分からない

その後、ラインの連絡がぱたりとこなくなった。

少しだけ寂しい気持ちもあるけれど。

前向きに生きようとする恵美ちゃんのあのときの言葉は忘れられない。

人生何が起こるか分からない。

だけど、恵美ちゃんの気持ちを大切にするために、今日も私は全力で仕事に恋に打ち込んでいる。

恵美ちゃんの言葉があったから、私は幸せになるために生きているのだろう。

恵美ちゃんのその後は私も分からない。

だけどたしかに私の心の中には、確実に恵美ちゃんの言葉は刻まれている。

何十年先もきっと・・・。

 

n603著

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