「工業高校の現実」

この学校に入学して半年
ここに入ったのは失敗だと思った。
受験の時に特にがむしゃらに勉強したわけでもなくとりあえずどこでもいいから入れればいいやと入った高校。
クラスを見渡せば
男男男男ヤンキー女、男男男
とほぼ男子校。
これが工業高校の現実だ。
もちろん自分みたいな内面はノミの心臓のように小心者で、
外見だけ意気がってるようなやつが気の強そうなヤンキー女と仲良くなれるはずもなく
(仲良くなりたいとも思わないが)
カビ臭さ漂う教室内で退屈な授業を消費する毎日を送っていた。
なんで共学の学校を選ばなかったのだろう・・
いや選択肢はあったのだ。
受験3校中公立の高校は落ち市立の高校2校は受かった。
ひとつは共学の普通の高校だった。
しかし通学で電車賃がかかるからと選択肢から外したのだ。
親になるべく負担はかけたくなかった。
なんていうのは表面上の理由で
内心は遠いから面倒
女の子と教室の中で一日中過ごすのは息が詰まる
という想いがあった。
『女の子と接するのが苦手。』
これが僕の中で大きな決め手となった。
それから高校に入学して半年
僕は女の子を求めている。
女の子のやさしい微笑み
弾んだ明るい声
髪から漏れる甘い香り。
この変わり様はなんなのだろうか。
教室の中に女子がいる有り難みというものに失って初めて気付いたのだ。
girls is lost ッ!
( 女の子は失われます )
「出会い」

出会いがない日常。
頼りになるのはやはり友達。
今度メル友の女の子と2対2で会おうと思ってるんだけどどう?
と誘われた。
もちろん答えはYESだ。
時間帯は学校帰りということに決まった。
当日待ち合わせ場所の駅前に現れたブレザーの制服姿の二人組
二人ともナイスバディの持ち主だ。
僕もブレザーだし友達も他校のブレザー
ではブレザーデートと洒落混みますか。なんて。
2組それぞれ別れて僕たちは近くの公園のベンチに腰を降ろした。
僕の相手はヨウコちゃん。
ちょっとぽっちゃりして見えるがすごく良い子だ。
会話の中から彼女がすごく家族思いなのが伝わってくる。
しっかりしている様に見えるからお姉ちゃんなのかもしれない。
女の子に不慣れだから相手がヨウコちゃんみたいな子でよかった。
一通りお喋りした後最後にゲームセンターでプリクラを撮りそれでバイバイした。
それから後日。
「レイ子ちゃんがお前のことカッコイイって言ってたぞ」
いつものように何人かの友達とつるんで遊んでいる時に紹介者の友達が教えてくれた。
レイ子ちゃんて僕の相手じゃなかった方だよな?
ちょっとおとなしい感じの。
マジ?
「あ~!クソぉ、」
と紹介してくれた友達は団地の周りにある竹の囲いに感情をぶつけた。
正面から彼の蹴りが入った囲いは見事に足型サイズの風穴ができあがっている。
おいおいやりすぎだぞ、
しかし、カッコイイと言われて嬉しいけど
レイ子ちゃんみたいなおとなしそうな子って苦手なんだよな。
目がくりっとして可愛い顔なんだろうけどあの顔立ちの子苦手なんだよ。
ちょっと母方の叔母さんの顔に似ているし。
嫌味に聞こえない程度に友達にそういう風に伝えた。
なんかこういう時ってすごく言い方に気を遣う。
どっちかと付き合うっていうなら
まだヨウコちゃんの方がいい。
好きって気持ちは芽生えなかったけど。
結局今回は縁がなかったということでという感じで
それっきりの出会いだと思っていた。
しかしそれから何週間か経って友達の誘いで再会することになる。
「カラオケオールナイト」

ヨウコちゃんが歌うドリカムの未来予想図に聞き入ってしまっていた。
声が通っていてすごく上手だ。
ドリカム好きなの?
と聞くとうなずいた。
そんな感じがしたよ。
レイ子ちゃんは歌わないみたいだ
あまり上手くないらしい。
みんな一通り持ち歌も歌い尽くしたところで休憩をとっていた。
やり尽くした後の沈黙。
画面から流れるガイダンスがBGMと化している。
こういう時に彼女たちを楽しませる話術があれば苦労しないんだけど
ただ気づかいぐらいしか取り柄のない自分としては
誰かが盛り上げてくれることに期待するだけなのに。
その隣の肝心な誰かさんは
とても眠そうにしている。
オイ、
お前がそんなんでどうするだ!?
僕に責任を押し付けるなッ
こんな時に盛り上げ役の人間がいてくれたら・・
てか男が盛り上げないといけないみたいな風潮苦手なんだよな。
とりあえず歌うしかないか。
まぶたが重くなってきた。
時刻は深夜2時をまわっている。
僕ら男たちが睡魔に襲われているなか
女子ふたりは小さめの声でお喋りをしている。
女の子って体力あるよなほんと。
ふたりが話しているのをいいことに目を閉じる
天井の眩しいミラーボールが気にならないほど体力を消耗していた。
もう少しで寝落ちしそうというところで
足の裏にもぞもぞとした刺激が走った。
はぅ!?
と反応し首を起こして出所の方を向くと
レイ子ちゃんとヨウコちゃんがこっちを見て微笑んでいる。
どうやら実行犯はレイ子ちゃんらしい。
ちょっと以外だった
まあヨウコちゃんもしそうな感じではないけど。
一応ノリ良くツッコミを入れたつもりだけど
まだレイ子ちゃんに対して遠慮してしまうところがある。
好意をもってくれてると思うと余計に。
夜がすっかり明けふかふかの布団恋しくなってきた頃
そろそろ出ようかと店から出ることにした。
暗がりの中から出てきたもぐらのように外の明るさが眩しくて目に染みる。
ふたりは少し先で車のお迎えが来ているということなので
そこまで送ってバイバイした。
ふたりが見えなくなったところで友達が
「どうよ?」
と聞いてきた。
お前声ガラガラじゃないか。
レイ子ちゃんと付き合ってもいいんじゃないのかと促してくる友達。
薦めてくるということは彼はレイ子ちゃんのことを諦めたのかもしれない。
自分の気持ちとしてはまだ好きまではいってないけれど
僕の方から付き合ってほしいって言ったらきっと付き合ってくれるだろう
ということはわかってる。
女の子と付き合ってみたい、
でも好きになってない女の子と付き合うのもどうなんだろうか。
相手にも失礼だと思うし。
「迷うよ」
と素直に答えた。
すると友達は
「いいじゃねえか付き合ってから好きになっちゃえば」
と名言的な言葉を口にする。
確か前にこんな話しをしていたよなあと思い出した。
『好きになって付き合うか付き合って好きになるか論争』
お互い徹夜明けみたいな状態でナチュラルハイになっているから
木っ端ずかしい物言いも真面目に語りあっている。
ちょっと笑える。
「確かに誰かと付きあってみたいけど・・。」
まあじっくり考えて答え出せよ、
友達はカッコ良く締めくくった。
「はじめての告白」

「ぼくと付き合ってください」
告白の言葉はオーソドックスな言い方で決めてみた。
「うん。いいよ」
と僕の申し出を受け入れてくれるレイ子ちゃん。
オールナイトのカラオケから二日後の夕方
電話でレイ子ちゃんに告白した。
出した答えは『付き合ってから好きになる』だった。
初めての告白という割には
そこまで緊張してなかったように思う。
オーケーされてもそこまでの感動はなかったが
それでも初めて彼女という存在ができたのは嬉しい。
キスはどんな味がするのだろう。
誰かレモンとかイチゴとか言っていた気がするが――――――――――
───「ゴメン、やっぱり付き合えない、」
告白して一日も経たずに断りの電話を入れている自分がいた。
半日ずっと考え続けて
やっぱり『好きにならないと付き合えない』
と決断を下したからだ。
受話器の向こうのレイ子ちゃんの反応はない。
「俺を好きになってくれたことは嬉しいんだけどさ、」
まず感謝を挟んだ
「俺は」
初めて付き合う人は自分がちゃんと好きになった人がいいから
「愛されるよりも愛したいんだよね」
マジで。
ついボキャブラリーに走ってしまったヒドイ奴。
「ほんとごめん、」
レイ子ちゃんの反応はない。
「ほんとゴメン!」
もう一度詫びて逃げるようにして電話を切った。
そんな色々な意味で痛々しいデビュー戦であった。
レイ子ちゃんあの時はホント申し訳ありませんでした・・。
fmifmi著






























