これは、私の大学生時代の軽音楽部の後輩の話だ。
恋愛において苦楽を共にするのは簡単な話だと思うが、分かち合うことがどれほど難しいか。
それを痛感した私の後輩の話をしよう。
出会い

ある年の4月、私は大学内の最も広い教室の中でRADWIMPSを演奏していた。
広い客席の中間ぐらいの席で楽しそうに見てくれている男がいた。
その男はこの後入部し、友と呼べるほど仲良くなる後輩だった。
その後輩と同期の女の子もいたが、その2人は入部後に出会うことになるのだった。
交際まで

2人が入部してから付き合うまではたったの一ヶ月と、急展開に交際は始まっていた。
後輩の男には私の先輩にも当たる兄がいたため、私自身も親近感があり、よくご飯に連れて行くこともあった。
まるでおしどり夫婦かのように仲睦まじい2人の姿を何度も目にしていたが、その後の2人の交際は順風満帆とはいかないものだった。
1年後

何もかも順調なように見えていた2人。
その2人が別れたという話は、部内で瞬く間に広がった後に耳にした。
後輩とはよくライブもしていたし、パート先が同じだった彼女の方は一緒にライブをしたことは無かったが、熱心に活動をしていた。
SNSでもよくデートの投稿をしているのも目にしていた。
一体何があったのか、本人から話を聞いていなかったため、取り急ぎご飯に誘ってみることにした。
別れた理由

「一体どうして別れてしまったんだ?」
私は年齢上自分だけビールを煽りながら単刀直入に聞いた。
「彼女は僕と付き合うプレッシャーに耐えられなかったらしいんです、彼女の方から別れを告げられました。」
言っていることは分かるが、いまいち要領を得なかった。
ましてやまだ19歳同士で付き合うのにプレッシャーなどあるだろうか。
このままではなんと声をかけたものか。。
詳しく経緯を聞いてみるとようやく理解ができた。
後輩には上述の通り兄がいるのだが、その兄も同じ部活で活動しており、非常に顔が広かった。
いろんな大学の人とも知り合いで、他大学とも繋がってライブ活動に繋げているうちの部にとっては必要不可欠な人材だったのだ。
そのスキルを受け継いでか、後輩の方もみるみるうちに名が知れていき、いろんな方面から称賛を浴びるまでに成長していた。
そんな後輩と付き合っていた彼女は各所方面から、後輩の賞賛や「絶対に別れちゃだめだよ」などと言われていたようだった。
後輩がうちの部にとって凄い凄いと言われ続けて行くうちに、付き合うことにプレッシャーを感じ、募らせ耐えきれなくなってしまったのだろう。
分かち合いの難しさ

後輩としても「そんなことで?」となっていたようだが、そういう問題には気づけていなかったみたいだ。
「もし、彼女のその悩みに気づけていたら別れずに済んだと思う?」と私は聞いてみた。
「気づけていてもどうしようもなかったと思います。」
それはそうだ、自分が気づけていたとしてもその時に最適な対処ができるだろうか。
彼女の求める対処とはなんだったのだろうか。
彼女にどんなフォローを入れたとしても、実際に期待の言葉を浴びせられるのは彼女なのだ。
恋人である後輩ですら、別れるという答えを彼女が出すまで気づけずにいた事を周りは知りようもなく状況は続くだろう。
1年という時を共に過ごしていても後輩は彼女と、最初は小さかったはずの悩みですら「分かち合うこと」が出来なかったのだ。
どちらが悪いでもなく別れてしまうことが往々にしてある。
苦楽を分かち合うことがどれほど難しいか。
現在

お互いが大学を卒業し、社会人となった今でも後輩とは良く飲みに行く仲だ。
あの時の音楽の話、お互いの進退の話、この失恋の話。
毎回決まった話題になるのは、今もまだお互いに独り身だからだろう。
いつかこの後輩にも、私とうかうか飲みに行けないぐらいに守りたい人ができるだろう。
そんな私の仕様のない不安をも分かち合えれば幾分か成長できるのに。
そう思いながら日本酒で乾杯した。
ksgob56著
























