サークルでの出会い

寂しい女

きらきら輝く人


まず初めに、突然だが私はとても寂しがりな人間だ。基本彼氏がいて当たり前で、いない時は1人がひどく不安だった。家庭が少し複雑だった影響もあってか、1人ではいられない人間だった。

そんな私と彼の出会いは、大学のサークルだった。

同じバスケットボールサークルに所属していた彼は、持ち前の運動神経と、整った顔には似つかわしくない無邪気な笑顔でサークルの人気者だった。

かくいう私も、彼のシュートが入った時の、キラキラ輝く笑顔から目が離せなくなった1人だ。

飲み会の席で話すようになり、付き合うまでは割とすぐだったが、今思うとあんなにサークル中の注目の的だった彼が、どうして口下手な私を選んだのかわからない。

たしか彼は

「だって君はいつでも綺麗だったから」 そういってた気がする。

それはこっちのセリフだというのに。

彼との思い出は今でもキラキラ綺麗に輝いていて、まるで彼の無邪気な笑顔そのままのようだ。

 

愛しさが募る


彼と付き合いだして気づいたことは、彼は思ったより完璧な人ではなかった事だ。

運動神経抜群な彼は実は勉強は今一つで、私はいつも大学終わりの帰り道、カフェで勉強を教えていた。なかなか集中力が続かない質らしい。

「バスケしてる時はあんなに集中してるのに?」とからかい交じりにいうと、「そこが=な人間なんていないね!」となぜか偉そうに断言していた。妙に自信満々なのがおかしくて笑いが止まらなかった。

他にも妙に好き嫌いが偏っているところとか、ものすごくくだらない芸人のギャグにはまって会う度に1度はしてくるところとか、全然道が覚えらなくて、私の家にもナビがないと行けないところとか。付き合うまでは思ってもみなかった彼の一面がどんどん出てきて、「愛しさが募る」というのはこういう事かと、柄にもなく本気で思った。

彼と会えない時間が寂しくて、早く大学を卒業したい。そうすれば一緒に暮らせるようになって、ずっと一緒にいられるのに。

 

真っ赤なポット


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ある日、二人で買い物に行った時、雑貨屋さんで目に付くものがあった。

真っ赤なポットだ。ホーロー、ケトルともいうのだろうか。取っ手があって、2Lぐらいは水が入りそうな真っ赤なポット。

私の実家ではお茶を沸かす時は昔ながらのアルミでできたやかんを使っていて、おしゃれなポットには憧れがあった。仲良しの友達の家には綺麗な色のスリムなポットがあって、とても羨ましく思っていたのだ。

それを見つけた時思わず「あ、かわいいポット!私自分の家ができたらこういうお洒落なキッチングッズで揃えたいんだよね」と声が出ていた。

特に深い意味はなかったけれど、言った瞬間あまりの気恥ずかしさに「まずい」と息をのんだ。彼になんて思われただろうと不安になった。

しかし彼は「あぁ、じゃあ一緒に住んだらこのメーカーで揃えようか」となんでもない事のように言った。まるで私たちがこの先もずっと一緒にいる事が当たり前かのように。

嬉しかった。ああ、この人はこれからもずっとこんな風に当たり前みたいに私のそばにいてくれる。もう寂しくなる事はないのだと。ひどく、嬉しかった。

 

1人ではいられない


大学卒業が近づいてきた頃、就職活動が本格化してきた。特にやりたい事もなかった私は、近くで働きたいと思い、家からすぐ近くの会社に応募し、内定が決まった。

彼も当たり前のように近くに就職するのだと思っていた。そうに決まってると思い込んでいたから、お互い就職の話はあまりしなかったし、そろそろ一緒に住む家探さないと、なんて考えていた、その矢先だった。

「東京に行く。迎えに来るまで、待っていてくれないか」

呼び出して開口一番、彼はそう言った。信じられなかった。なぜ、どうして?ずっと一緒にいてくれるって言ったのに。いろいろな話をしたし、彼にも事情があるのはわかっていたけれど、私は裏切られた気持ちでいっぱいだった。自分の中で何かが消えていくのがわかった。どんな事情があろうと、彼は私から離れる事を決めたのだ。

たくさん泣いて、話して、私たちは別れた。彼を嫌いになった訳ではなかったけれど、傍にいてくれないなら、もう駄目だった。私はまた、寂しい女に戻った。

 

新しい出会いと、思い出と


しばらくして、私は会社で出会った別の人と付き合い始めた。新しい彼は、とても優しくて、少し不器用だけれど、私を1人にしない。結婚も目前だった。

そんなある日、家に荷物が届いた。なんだろう?実家からかな?荷物に特に覚えがなく、宛先を見てみると、東京の住所と、「彼」の名前があった。

息が止まった。どうして、今になって。確かに前と家は変わっていないから、「彼」は私の住所を知っている。でも今更いったい何を送ってきたのだろう。

震える手で、段ボールを開けると、そこにはあの時雑貨屋さんでみた赤いポットが入っていた。私が一目ぼれして、2人で一緒に暮らすようになったら買おうと話していた、あのポットだ。

涙が止まらなかった。荷物にはそれだけで、それ以外手紙も何も入っていなかった。でも、それだけですべてが伝わって、胸が張り裂けそうだった。「彼」への思いが止まる事無くあふれて、どうしたらいいのかわからなかった。

「彼」の事は1度忘れた。忘れて、消えて、そして今の彼を愛した。今の彼を愛している気持ちは変わらない。でも今、このポットを見るとあの「彼」との思い出が洪水のようになだれ込んできて、あの無邪気なきらきらと輝く笑顔が私を見つめている。

もう結婚の話は少しずつ進んでいる。今のこの家も、近々引っ越して、今の彼と一緒に暮らす予定だ。

私は2人の彼の顔を思い出して、悩んで、考えて、そして。

 

それから


あのポットが届いた日から数年たち、私は新しい家に引っ越した。結婚もして、子供もいる。ずっと一緒にいてくれた、不器用な彼との、だ。

あのポットは、あの後すぐに丁寧に送り返した。もう一緒にいられないと言葉を綴った「彼」への手紙を添えて。

送られてきたポットを見た時、最初は張り裂ける思いのまま「彼」の」ところへ行こうと思った。この激情のまま、会いに行こうと。

でも思い出した。私は寂しいのが嫌いだ。1人になりたくない。そんな私を彼は1度、1人にした事があるのだと。事情があるのもわかっているし、人によってはなんてわがままな奴だと私を罵るかもしれない。

でも私はずっと思っていた。私は一人ではいれない寂しがりな女なのだ。「待っていてくれないか」ではなく、「一緒についてきて欲しい」。そう言ってくれれば、私はずっと「彼」の傍にいたのに。

あれから数年たち、私達はとても幸せに暮らしている。子供にも恵まれて、穏やかに、順風満帆な日々を過ごしている。

しかし時折街中で、赤いポットを見かけた時、ふと思い出す。そのポットのように鮮やかで、キラキラ輝く、無邪気なあの笑顔を。

nkcirii著

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