サークルでの出会い

すれ違い続けた二人

「27歳の時に出逢った人が運命の人」
昔から何故かそう思っていた。

肝心の27歳の誕生日。
私は絶賛お一人様。

強がりからか、自己啓発に打ち込む日々。
料理教室・パン教室・英会話・フラワーアレンジメント・ヨガ・ピラティス。
一通りの事は手を出してきた。

運命の習い事も、あいにく見つかっていない。

~雨の電車の中で~

”やりたい習い事リスト”の制覇が近づくころ、
つぎは、1年間のプログラミングスクールへ入学。

ビジネス力を付けないと。一人でも生きていける力は付けておかないと。
・・・は表向きの理由。
もしかしたら出逢いがあるかも・・なんて薄い期待を抱く。

目的地に向かう電車の中で、ガラス越しに車内の人と目が合い、そらす。

外は雨。

停車駅で乗り込んで私の横に立った男性は、傘を持っているのにやけにずぶぬれ。
雨のしずくをポタポタと垂らしている傘を、手すりと共に上の方で持つ。

私の荷物にしずくが落ちそうなのも、気にもせず携帯電話の画面に集中している。
耳にしているイヤホンからは微かに音楽が漏れている。

気に入っていた隅っこの立ち位置を諦めて、場所を移動する。
同じくらいの年代なのに、マナーがなっていない人。
思わず顔を拝見した瞬間、目が合う。

少しにらみつけるかのような視線で私を見る。
たまたま視線の通り道でしたけど。
というカモフラージュをしつつ、顔をそむける。

・・意外とかっこいい。

~まさかの再会?~

目的駅で扉が開き、教室へと向かう。
電車内の不快な事態はすっかり忘れ、次の目的に胸が高まる。
初めて訪れる場所はドキドキするけど、ワクワクする。

駅の上り階段をリズムよく上り、小走りで下り階段を降りる。
改札を出たら雨も止んでいた。

事前に予習していた頭の中の地図はカンペキ。
想定の5分前に到着。一呼吸して入室。

既に5~6人の人が居た。
同年代が多いのかもしれない。男性7:女性3の割合といったところ。
一瞬で色々な情報を解析しながら、笑顔で「こんにちは」と挨拶を交わす。

私の後に続き、扉が開いて1人入室。
傘は、まとめないまま傘立てにねじ込み、足音を立てて入ってくる。
他の傘たちがかわいそうに・・・。

あ、傘。電車の中に忘れた。
気に入っていたのに。赤い傘。

うっかり忘れものをしたことに気づき、慌てた顔を、じっと見てくる足音の男。

・・・さっきの無礼男だ。

 

~二人の恋~

印象の悪いヒロとは、意外にも意気投合し、恋に落ちるのは遅くはなかった。
27歳に出逢った運命とはこういう事なのだろうか。

付き合って2年半。

傘を電車に忘れたことを知ったヒロは私に内緒で傘を探してくれた。
見つかった赤い傘を得意げに私に渡す、少年の様な彼の表情は今でも忘れられない。

30歳という節目を何かしらの形で迎えたい。
・・・ヒロは結婚を考えているのだろうか。

「結婚ってさ、したいって思っている?」ふとした時に聞いた。
「うーん、そうだね。でも俺、今はまず、仕事をちゃんとして一人前にならないと」
転職したてのヒロはそんな余裕もなさそうだ。

結婚の話を30手前の女から切り出す事に、少し寂しさを感じてしまった。
この話をするのはやめておこう。

~付き合って5年~

私は仕事が楽しい。
学校で学んだことも仕事で活かし、いわゆるキャリアウーマンを楽しんでいる。

仕事の帰り道、駅から家まで歩く5分間だけの日課になっているヒロとの電話。
私の仕事のペースに合わせてくれてるヒロ。

「結婚ってさ、したいって思っている?」ヒロが私に聞いた。
ふと足が止まる。きっと本当ならうれしい質問。

私が出した答えは「うん、いずれかね。」

~付き合って8年、そして別れ~

相変わらずヒロは尽くしてくれる。
私はヒロとの結婚はもう考えられなくなっていた。
ヒロの優しさと愛情が余計につらい。

長く居過ぎた。
結婚して何が変わる?
収入は私の方がある。
高い所の電球も自分で変えられる。

強くなり過ぎたみたい。

別れを告げた。

赤い傘は別れた翌日に破れた。
いや、もう破れていたのだろう。

~愛する人の結婚~

仕事に打ち込む日々。
そして数か月に1度、連絡をくれるヒロと食事に行く。友人として。

関係が変わってもヒロは相変わらず、私に尽くしてくれる。
この関係が続けばいいと思っていた。

しかし現実はそう上手くはいかなかった。
ヒロの父親が病気になり、ヒロは見合いの相手と結婚をするという。

私の様子を伺うヒロに気づかないふりをする。
嫌だと言って止める勇気と覚悟は無かった。

精一杯の笑顔で「良かったね。幸せになって」。

上手く言えたのかはわからない。
ふり絞った声が裏返った事だけ覚えている。

~初めて気づく想い~

もぬけの殻の様な状態で日々を過ごす。
何のために仕事に集中して来たのだろう。
その目的もわからなくなってしまった。

家に帰るとマンションのドアに赤い傘。
一緒に挟まっていたメモがヒラリと落ちる。

「きれいな赤い傘見つけたから最後にプレゼント。今までありがとう。
本当に愛していました。」

傘を広げる。
どこにいても見つけられそうな真っ赤な傘。

何かが急に弾け、堰を切ったように涙が流れたした。

泣いても泣いても、涙は枯れずに溢れる。

彼の存在の偉大さに気づくのに10年もかかるなんて。

小さくて大きな愛の二人の恋が終わった。

~赤い傘~

次の梅雨の季節。
仕事の区切りがついて今日は早帰り。
外は今日も雨。

欲しかったコスメを買いに行くため、帰り道とは違う電車に飛び乗る。
電車の窓に映っても、色鮮やかな赤い傘が視界にちらつく。

雨の日にはこの傘を持てる楽しみがある。雨の日は嫌いじゃない。

電車から降りていく、赤い傘を持った女を目で追う一人の男。

思わす男の口元が緩む。
声をかけようとして、辞めた。

元気そうでよかった。心の中でつぶやいた。

しpwp著

 

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